【上海快報】 中国赴任者(駐在員)の帰任に伴う注意事項について

中国赴任者(日本人を想定)が任期を終えて帰国する場合、中国側では、着任に伴って行われた手続と同様、各種の手続きが必要となります。今回は、中国赴任者が帰任するに当たって必要となる諸手続きと注意事項を整理します。

1.工作許可の抹消

中国赴任者は、中国法人もしくは駐在員事務所などで“就業”することが目的となります。そのため、中国赴任者が中国大陸戸籍以外の者で、永住許可をしている場合でない限りにおいて、中国で就業するに当たっては必ず就業にかかわる許可(以下、「工作許可」とします。)を取得する必要があります。一方、中国赴任者が帰任するに当たっては、この「工作許可」を抹消する手続きが必要となります。なお、「工作許可」は、駐在員事務所の代表として勤務すること、もしくは中国法人で勤務することを前提として発行されますので、当該手続きは駐在員事務所もしくは中国法人が申請者となって手続きを行うことが想定されています。

当該手続きを怠ったとしても、期限の到来とともに工作許可は失効します。しかしながら、「工作許可」の抹消は後述の「居留許可」抹消の条件とされているため、「工作許可」を抹消しないために「居留許可」の抹消を行うことができず、結果として出入国管理上の問題が生じる可能性がある点には注意が必要となります。また、中国の社会保険について、法令上、外国人は「工作許可」を保有することが加入の条件となっているため、「工作許可」が抹消されない(もしくは失効しない)限り社会保険の保険料負担が生じるといった可能性があります。

2.居留許可の抹消

中国赴任者が中国大陸戸籍以外の者で、永住許可を取得している場合でない限りにおいて、中国で長期滞在をするためには、「居留許可」の取得が必要となります。一方、中国赴任者が帰任するに当たっては、この「居留許可」を抹消する手続きが必要となります。「居留許可」が抹消されると、その時点から中国に滞在することが認められなくなります。そのため、抹消手続に当たっては、抹消から帰国までの一定期間において中国での滞在が認められる停留証が発行されることとなります。

中国赴任者の「居留許可」は、前述の「工作許可」を条件として取得が可能となります。そのため、「居留許可」の抹消に当たっては、事前に「工作許可」が抹消されていることが必要となります。なお、「居留許可」に関しては、事情変更が発生した場合には10日以内に出入国管理局に届出を行うことが義務付けられています。そのため、中国での労働契約の期間の終了日、もしくは辞令による任期終了日(以下、任期終了日とします。)から10日以内に居留許可の抹消申請を行う必要があります。しかしながら、現実には、中国赴任者は、任期終了日とほぼ同時に日本に帰国することが多いため、居留許可の抹消手続を行わないままに中国を出国することが多いものといえます。「居留許可」を抹消しないまま帰国したとしても、この一事をもって何らかの処罰が

行われることはありませんが、帰任後に赴任に当たって取得していた「居留許可」に基づいて中国に入国、滞在する場合には、目的外滞在、等の出入国管理上の諸問題が発生する可能性があるため注意が必要です。

3.社会保険の脱退

中国赴任中に中国の社会保険に加入していた場合、帰任に当たって社会保険から脱退することが認められています。社会保険から脱退する場合、特に養老保険(年金)、医療保険に関しては、個人口座積立部分が中国赴任者個人に脱退一時金として支給されることになります。一方、脱退は必ずしも義務ではなく、個人の選択の委ねられることから、脱退せずに社会保険の加入履歴を中国に残すことも可能となります。この点に関しては、本来は、中国赴任に当たって会社と中国赴任者との間で取り決め(海外赴任規定等)を行われるのが一般的ではありますが、仮に事前にこのような取り決めが行われていない場合には、帰任に当たって会社と中国赴任者とで協議が行われるべきこととなります。

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