中華人民共和国 外商投資法の施行について

2020年1月1日より中華人民共和国外商投資法(以下、「外商投資法」とします。)が施行されます。これまで、外国から中国国内へ投資して設立される企業(以下、「外資企業」とします。)に関しては、いわゆる外資三法(以下で解説します。)が規定しており、投資形態に応じて個別の法律体系の下で管理が行われてきましたが、外商投資法の施行後は、原則として投資形態にかかわらず外商投資法の下で管理されることになります。今回は、外商投資法の施行に伴う「外資企業」の管理体制の変化について整理します。

1.「外商投資法」施行前の外資企業に対する管理体制

中国国内(香港・マカオ等の特別地域は除きます。)に投資、設立される企業は、出資者の属性に応じて内資企業、外資企業に区別されます。通常、内資企業は、出資者が中国人もしくは中国国内企業のみから構成される企業、外資企業は、出資者に外国人もしくは外国国企業が含まれる企業、というように定義されます。現在では、内資企業、外資企業にかかわらず「公司法」の適用をうけますが、「外資企業」については、「公司法」(1993年制定)の適用を受けると同時に、「公司法」が制定される以前に制定されていたいわゆる外資三法(以下、「外資三法」とします。)の適用を受けてきました。外資三法とは、「中外合資経営企業法」(1979年制定)、「外資企業法」(1986年制定)、「中外合作経営企業法」(1988年制定)を指しますが、中国の改革開放政策に伴い外資の導入を認める過程で順次制定されてきました。この前提として、外国から中国への投資は“原則として禁止”であり、政府の許可を得て初めて投資が可能とされていたという事情があります。このように、いわゆる外資三法は、外国企業が中国へ投資するための条件を規定する法律としての意義を有していましたが、中国経済の発展や改革開放の深化とともに外資三法による外資企業に対する規制の意義が希薄化、形骸化していました。

2.「外商投資法」施行後の外資企業に対する管理体制

「外商投資法」の施行に伴い、いわゆる「外資三法」は廃止されます。また、「外商投資法」では、外国から中国への投資に対して原則としてネガティブリスト管理を行うこととし、投資目的が「ネガティブリスト」に該当しない場合には、内資企業と同様の管理を行うこととしています。これは、外国からの中国への投資が“原則として禁止”から“原則として自由”に変化するという、大きなパラダイム転換が行われたものといえます。また、外資三法の下では、外資企業の企業形態、組織、財務等についても詳細に規定されていましたが、「外商投資法」の施行後は原則として「公司法」の管理に委ねられることになります。

◇「外商投資法」施行後の外資企業の概要

項目外商投資法施行後の外資企業の概要
投資に対する規制ネガティブリストに規定される領域以外の投資目的については、原則として自由 (ただし、内資企業と同様の待遇を受ける、という意味においての自由)
最高意思決定機関株主会、もしくは株主(単独の場合)
経営責任董事 (董事会(3~13名)もしくは執行董事(1名)による意思決定)
最低資本金規制なし
資本金払込期限規制なし
法定内部留保(法定利益剰余金)準備基金(最低10%、登録資本金の50%に至るまで)のみ

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