新型コロナウィルス感染拡大防止措置に伴う企業支援政策 について

中国のみならず世界各地で猛威を振るう新型コロナウィルス(COVID-19)に関して、中国国内では徹底した移動制限及び隔離政策が実施されています。移動制限及び隔離政策は、個人の移動や活動の自由を制限するのみではなく企業経営に対しても大きな影響をもたらしています。これに対して、政府も積極的に企業の経営活動を支援するための政策を打ち出しています。上海市では、新型コロナウィルス感染拡大防止措置に関連する28項目の企業支援政策(濾府規(2020)3号)を発表しており、その中には、企業活動への積極的な支援策も含まれています。今回は、上海市で発表されている28項目の企業支援政策について概説します。

1.企業支援政策の概要

上海市の28項目の企業支援政策については、以下の六分野に区分されます。

◇企業支援政策の区分

1.企業の防疫行動への支援
2.企業の負担軽減
3.金融手段による企業支援
4.雇用安定に向けた企業支援
5.企業の営業再開、生産再開の促進
6.企業に対する行政等のサービス、ビジネス環境の整備

このうち、1の分野については防疫に必要な重点物資を研究開発、生産、輸送、販売などの形態で関わる企業に向けた支援策であり、防疫とは直接かかわりのない一般企業を対象とするものではありません。これに対して、2~6の分野については、新型コロナウィルスの感染拡大防止措置が一般企業の経営活動に影響を及ぼすことを前提とした一般企業に向けた支援策といえます。このうち5の分野については、企業の経営悪化に伴う雇用不安が生まれることに政府が危機感を抱いていることを顕著に示しているものとみてとることができます。

2.具体的な政策

上記の区分に属する具体的な政策のうち、一般企業に適用されることが考えられる項目について、2~6の分野からピックアップして以下に列挙します。

◇企業支援政策から抽出した具体的内容

2.企業の負担軽減

政策の内容
2月、3月のオフィス及び工場の賃貸料を免除する。 (ただし、賃貸物件が上海市の国有企業の経営性不動産に属する場合に限る。)
大型オフィスビルやショッピングモール、園区などの民間経営主体に対して、オフィスやテナント、工場などの賃貸料の減額及び免除を推奨する。(強制力なし)
納税申告期限の延長(最長3ヶ月)を認める。 (国家税務総局より1月分の税務申告期限が2月28日まで延期されることとされています。)
新型コロナウィルス感染拡大による影響が比較的大きく困難な状況にある業種の企業については、2020年に発生した損失の繰延期間を通常の5年から最大8年まで延長する。 (国家税務総局により、「困難な状況にある業種」とは、交通運輸業、飲食業、ホテル宿泊業、旅行業の四大業種を指し、2020年の企業収入に占める当該四大業種にかかわる収入の割合が50%以上であることが条件とされます。)
新型コロナウィルス感染拡大防止のために現金及び物資を寄付した企業もしくは個人については、企業所得税もしくは個人所得税の計算において、寄付に相当する金額の全額を所得控除することができる。 (国家税務総局より「寄付」は、公益性社会組織、もしくは県レベル以上の人民政府及びその部門などの国家機関に対して行われたことが条件とされています。)

3.金融手段による企業支援

影響の大きな分野の企業(旅行、ホテル・飲食、卸売・小売、交通運輸、物流倉庫、文化娯楽、展示会等)に対して、借入支援、返済計画の変更(返済期限の延長や元本返済の凍結)などの方法により返済困難な状況を支援する。

4.雇用安定に向けた企業支援

人員削減について一定の条件を満たす企業に対する、前年度中に納付した失業保険料の50%を還付する。
社会保険料の納付年度を3ヶ月遅らせる。 (従来4月1日~3月31日であった納付年度を7月1日~6月30日とすることにより、2020年4月~6月の3ヶ月については従来の社会保険料基数に基づく納付を行うことにより、企業及び個人の保険料負担が減少します。)
2020年における医療保険の会社負担比率を0.5%引き下げる。

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