個人所得税法改正後の注意すべきポイント について

2019年1月1日から改正された個人所得税法(以下、「改正個人所得税法」とします。)が施行されています。改正個人所得税法では、居住者に対しては給料・賃金所得を含む総合所得について暦年一年間で課税することとし、一定の条件を満たす場合には翌年の3月~6月の間に年度確定申告(年度精算)を行わなければならないこととされています。新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により年度確定申告の手続開始が遅れていましたが、6月末の申告期限に向けて申告手続きが行われています。今回は、改正個人所得税法の施行により開始された居住者に対する総合所得課税について、課税の運用が一回りすることによりようやく見えてきた全体像を前提として、個人所得税の課税上注意が必要と考えられるポイントについて概説します。

1.居住者と非居住者の判定

改正前の個人所得税法では、給料・賃金所得は月ごとに課税所得を確定し、税額の計算、納税を行うことが前提とされていました。しかしながら、改正個人所得税法では、居住者については、給料・賃金所得を含む総合所得について、暦年一年間で課税所得を確定し、税額の計算、納税を行うこととされました。一方、非居住者の給料・賃金所得については、改正前と同様、月ごとに課税所得を確定し、税額の計算、納税を行うこととされています。この点で、給料・賃金所得を得るものが、居住者であるのか非居住者であるのか、という判断の重要性は改正前よりも増しているということができます。

◇居住者・非居住者の判定

居住者中国国内に住所を有する者中国国内に住所を有しないが、中国国内に居住する日数が183日を満たす者総合所得課税 (年度)
非居住者中国国内に住所を有せず、かつ居住していない者中国国内に住所を有せず、中国国内に居住する日数が183日を満たさない者給料・賃金所得課税 (月次)

2.年度途中での赴任者、帰任者に対する課税

赴任者が年度途中で中国に赴任する場合、また年度途中で中国から帰任する場合には、中国国内での居住期間が183日を満たすか否かにより当該年度の居住者か非居住者かを判定することになります。居住者と判定される場合には、該当年度においては原則として全世界所得課税が行われますが、連続居住年数が6年に満たない場合には国外払いの国外源泉所得については免除されるため、条件を満たす場合には、赴任前もしくは帰任後の本社払い給料については課税が免除されることになります。一方、非居住者と判定される場合には、原則として国内源泉所得のみ課税されることになりますが、給料・賃金所得については、源泉地が役務提供地とされることから、は赴任後もしくは帰任前の期間については、本社から支給される給料を含めた所得に対して課税されることになります。なお、非居住者と判定される場合には日本本社から支給される給料について短期滞在者免税(日中租税条約に基づくいわゆる183日ルール)の適用を受けられるか否かという点が問題となります。この点に関しては、日中租税条約に規定される条件を前提とすると、少なくとも日本の居住者でなければ短期滞在者免税を受けることはできないものと考えられます。

3.年度確定申告(年度精算)と賞与に対する課税

年度確定申告は総合所得に関する年間での税額を確定する手続きとなります。一方、賞与については、2019年~2021年までの間においては総合所得に加算せず分離課税を選択することができることとされています。賞与について分離課税を選択する場合、賞与は年度確定申告の対象とはならず、賞与の発生月に申告を行うことが必要となります。賞与に関しては、特に本社払いの賞与について年度確定申告での申告、納税を予定している場合がありますが、上記の通り年度確定申告は総合所得に関する手続きであり、分離課税を選択した賞与について申告、納税を行うことはできません。賞与について分離課税を選択する場合には、発生月の翌月に申告、納税が必要となります。

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