中国赴任者の中国への渡航に関する最新情報 について

新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的な感染拡大に対して、中国では3月28日以降、外国人の入国を原則として禁止する措置(以下、「外国人入国禁止措置」とします。)がとられていますが、ここにきて日本人の中国渡航に関するビザが発給されるようになってきている模様です。今回は、現時点における中国への渡航に関する最新状況と注意点について解説します。(以下、「現時点」は、本レポート執筆時点である6月20日を基準とします。)

1.中国への渡航方法

今回の外国人入国禁止措置では、3月27日以前に発給されたビザ及び居留許可は原則としてすべて暫定的に失効することとされています。また、日本国パスポート保有者に対して認められていたビザなし渡航についても運用が停止されています。

現時点における中国への渡航方法は、以下のビザを申請する方法のみとなっています。

◇外国人入国禁止措置にかかわらずビザ申請が認められる場合

ビザ申請が認められる入国目的備考
Ⅰ)必要な経済貿易、科学技術等の活動に従事する目的 (M) (Z)・中国の政府機関が発行する招聘状 ・Zビザの場合には、工作許可証のコピー及びQRコードから読み込める情報 ・その他資料については事前の確認が必要
Ⅱ)緊急の人道主義の必要に基づく目的 (F)必要資料については事前の確認が必要

このうち、Ⅰ)については、中国の政府機関が発行する招聘状(邀请函)が必要となります。招聘状は、中国国内の法人等が主体となって政府機関に発行を申請することになりますが、地域によって申請方法が異なるため、詳細については事前に法人等が所在する地域の外事弁公室に確認が必要になります。なお、現時点では、政府機関に対して招聘状を申請したとしても、実際に招聘状が取得できるケースは限定的となっているようです。申請にあたっては、「必要な経済貿易、科学技術等の活動に従事する目的」であることが明確になるような状況の証明が必要になるものと考えられます。

2.中国赴任者の中国への渡航にあたっての注意点

中国赴任者(外国人を前提とします。)は、中国で工作許可(在留資格)及び居留許可(在留許可)を取得していますが、外国人入国禁止措置により、3月27日現在中国に入国していない中国赴任者の居留許可は暫定的に失効するため、3月27日以前に取得した居留許可で中国に入国することができません。そのため、現状では、中国赴任者であっても、上記で指摘したⅠ)のビザを取得したうえで中国に渡航する必要があります。また、中国赴任者の中国への入国は、形式的には就業(工作)目的の入国となるためZビザの申請が必要となるものと考えられます。なお、Zビザの申請にあたっては、中国の政府機関が発行する招聘状のほかに、有効期限まで十分な期間のある工作許可証のコピー及びQRコードから読み込める登録情報が必要となります。

中国赴任者が上記で指摘したⅠ)のビザを取得して中国に入国すると、現地法人もしくは駐在員事務所での業務のために長期滞在(在留)が必要となりますが、当然ビザには停留日数の制限が付されている(通常90日、もしくは180日)ため、渡航後、この日数を超えた長期滞在が認められるか否か、という点については、特に以下の点に十分注意して確実な手続きを行う必要があります。

◇中国赴任者がビザで中国に入国したのちに注意すべき手続

 注意すべき手続
保有する居留許可が有効期限内である場合現地法人もしくは駐在員事務所を管轄する出入国管理局において、保有する居留許可の有効性の確認が必要となります。 仮に失効しているということであれば、出入国管理局と相談の上で居留許可の申請が必要となります。
保有する居留許可の有効期限が既に経過している場合出入国管理局と相談の上で居留許可の申請が必要となります。 (ただし、この前提として保有する“工作許可”について、有効期限内に期限の延長手続きが行われている必要があります。) 上海の出入国管理局へのヒアリングでは、有効期限経過から90日以内であれば従前取得していた居留許可を前提とした期限の延長手続きが認めるものの、90日を超過している場合には新規取得と同様の手続きとなる(体格検査(健康診断)が必要となる)との回答が得られています。

3.赴任者の渡航に関するその他の注意点

(1)工作許可の有効期限

上記の通り、中国赴任者は中国へ渡航したのちに、保有する居留許可が有効であることを確認する、もしくは有効な居留許可を取得する必要がありますが、その前提条件として、工作許可が有効期限内にある必要があります。そのため、赴任者の工作許可の有効期限に注意するとともに、期限到来が近づいた場合には確実に延期の手続きを実施しておく必要があります。なお、工作許可の延期手続は期限到来の3ヶ月前から可能とされており、現状ではインターネット上で申請資料のデータをアップロードするのみで手続きが完了できるため、本人が中国に滞在していなくとも手続きを行うことができる状況となっています。

(2)渡航の要否及び渡航時期

現時点では、限定的ではありますが、上記のような手続きを経ることにより日本から中国への渡航の実現が可能となっています。しかしながら、現実問題としては、現時点では、7月末までの間、中国-日本間の航空便が航空会社ごとに週1便とされており、成田-上海浦東便でも週4便のみとなっています。そのため、航空券が高騰していることのみならず、直近では航空券の確保事態も難しい状況になっている模様です。また、現状としては、あくまでも限定的に入国が許可されているに過ぎないため、ひとたび中国に渡航した中国赴任者が頻繁に中国から日本に帰国することが許される状況でないことにないことには変わりがありません。日本本社としては、これらの点を考慮の上で中国赴任者の中国への渡航の要否や渡航のタイミングを検討しなければならないものといえます。

最近の記事

  • 関連記事
  • おすすめ記事
  • 特集記事
PAGE TOP