【速 報】 2020年上海市の最低賃金と社会保険基数について

上海市では毎年4月から社会保険及び住宅積立金基数が変更され、これに合わせて最低賃金の変更が発表されていました。これに対して、2020年は新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、社会保険及び住宅積立金基数の変更は7月1日からとされています。なお、2020年の最低賃金に関しては、現段階(本レポート作成日7月20日現在)で変更の発表が行われていません。今回は、2020年の上海市の最低賃金と7月1日から変更となる社会保険料及び住宅積立金の基数について説明します。

1.2020年の『最低賃金』

中国では、『最低賃金』は省(及び直轄市)ごとに確定されます。直轄市である上海市では、『最低賃金』は一律に設定されますが、省においては、省の中の各都市を一定の基準で分類し、この分類ごとに『最低賃金』が設定されるのが一般的です。

会社は、賃金の支給に当たって、個人が負担すべき社会保険料や個人所得税を会社が源泉徴収、納付しなければなりません。『最低賃金』として規定される賃金は、これら社会保険料や個人所得税を控除した後の手取金額を意味します。

そのため、会社の従業員に対する最低限の給料負担額は、『最低賃金』に社会保険料(住宅積立金を含む)の個人負担額、及び個人所得税額を加算した金額となります。

■2020年7月1日から適用される上海市の最低賃金と会社の給料負担額

最低限の給料負担額~2020.06.302020.07.01~
最低賃金 2,480 RMB 2,480 RMB
個人負担の社会保険料(10.5%)の最低限度額518 RMB518 RMB
個人負担の住宅積立金(7%)の最低限度額(※1)174 RMB174 RMB
個人所得税0 RMB0 RMB
会社の給料負担額(給料総額)3,343 RMB3,343 RMB


(※1)住宅積立金の最低限度額は前々年度の最低賃金を基数として算出される金額となりますが、通常の雇用においては適用されることのない金額であるものと考えられるため、当年度の最低賃金を基礎として計算しております。

2.社会保険料の基数の変更

上海市では、新型コロナウィルスの感染拡大の影響をうけ、今年から毎年7月1日に社会保険料、住宅積立金の基数が変更されることとなりましたが、この基数は、各個人が前年(1月1日~12月31日)に支給を受けた賃金(以下、「年収」とします。)の月平均の金額とされます。年収には、賞与や特別一時金、残業代や諸手当も含まれます。

一方、社会保険料の基数の最上限及び最低限について、上海市では、上海市の前年の『平均月額賃金』の3倍を基数の最上限に、60%を最下限に設定しています。この『平均月額賃金』は、統計局が発表する前年の『平均賃金』を基に12ヶ月で按分して計算され、毎年基数が変更される4月1日以前に人力資源と社会保障局より発表されます。また、住宅積立金の基数の最上限及び最低限については、上海市では、上海市の前々年の『平均月額賃金』の3倍を基数の最上限に、前々年度の最低賃金を最低限に設定しています。

なお、上記を前提としつつも、新型コロナウィルス感染拡大による企業への影響を考慮し、7月1日から適用される社会保険料基数の最上限は28,107 元(適用する平均賃金を実際より低い9,369 元として再上限を計算する)、最下限は4,927 元(2020.06までの金額から調整なし)が適用されることとされています。

3.従業員の雇用にかかる最低限の人件費の変動

会社が上海で従業員を一人採用することにより発生する人件費の最低限度額は、上記の「会社の給料負担額(給料総額)」と「会社の社会保険料(住宅積立金を含む)負担額」を合計した金額となります。今年は、最低賃金、社会保険料の基数の最下限に変更がなかったことにより、人件費の最低限度額に上昇はありません。これは、これまでは毎年、人件費の最低限度額が上昇してきた(2019年:約5.3%、2018年:6.9%)ことから考えると、非常にインパクトの大きな事項といえます。

なお、新型コロナウィルスの感染拡大による企業への影響を緩和するため、小規模零細企業に対する社会保険料の会社負担部分の一部を免除(養老金、失業保険、労災保険の免除)する措置が2020年12月31日まで実施されることとなっています。そのため、実際には、対象となる企業の2020年7月~12月の会社負担の社会保険料率は10.5%となりますので、この間の人件費負担はさらに大幅に減少するものといえます。

■平均月額賃金と社会保険料基数の下限

最低限の社会保険料負担額~2020. 06.302020.07.01~
(前年の平均月額賃金)(8,926 RMB)(9,580 RMB)
(社会保険料基数の下限)(4,927 RMB)(4,927 RMB)
会社負担の社会保険料(27.5%)(※2)の最低限度額1,355 RMB1,355 RMB
会社負担の住宅積立金(7%)の最低限度額(※1)174 RMB174 RMB
会社の社会保険料(住宅積立金を含む)負担額1,529 RMB1,529 RMB

(※1)住宅積立金の最低限度額は前々年度の最低賃金を基数として算出される金額となりますが、通常の雇用においては適用されることのない金額であるものと考えられるため、当年度の最低賃金を基礎として計算しております。 (※2)労災保険は、業種によって料率が異なりますが、上記表中では、0.5%の料率を前提として計算しております。 (※3)2020.06.30まで適用された「前年の平均賃金」「社会保険料基数の下限」は、2019年5月に調整が行われたのちの金額となります。

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