【国際税務教室】 外国人の在留資格と相続税の納税義務

わが国の相続税についてみれば、国内に住所(生活の本拠)がある者は、原則として全世界の財産に対して納税義務を負うものとされます。しかし、そのような原則論からすれば、一時的に日本に在留する外国人に相続が発生した場合、日本国内にある財産のみならず国外財産に対しても、わが国の相続税が課税されることになります。このような点が問題視され、平成29年度の税制改正により、納税義務を緩和する改正が行われています。すなわち、相続が発生したときに、日本に住所がある者であっても、その者が出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」とします)別表第1の上欄の在留資格で日本に滞在している場合であって、その他の一定の要件を満たす場合には、日本国内にある財産のみが課税の対象とされ、国外財産は課税の対象外とされています(以下、「制限納税義務者」とします)。

 わが国に在留する外国人は、入管法別表第1(経営・管理、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、等々、就労に制限が設けられている資格)又は、別表第2(永住者、日本人・永住者の配偶者、日系3世等、就労に制限がない資格)に定められた在留資格を得る必要があります。その場合、別表第1と別表第2のいずれの資格も保有することができる外国人であっても、ひとつの在留資格のみしか持つことができないことから、いずれかを選択することになります。就労の視点からすれば、制限がない別表第2の在留資格が選択肢となり得ますが、他方、相続税の納税義務の視点からすれば、別表第1の在留資格には制限納税義務者の取り扱いが用意されているのに対して、別表第2の在留資格には、それがないことから留意が必要です。

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