年末に向けた企業所得税の注意点

新型コロナウィルス(COVID-19)の影響を大きく受けた2020年も残すところ2ヶ月ほどとなりました。中国ではほぼ全ての企業は12月末に決算を迎え、暦年の1年間(1月1日~12月31日)の利益に対して企業所得税が課税されます。今回は年末を迎えて企業が注意すべき企業所得税に関する注意事項について概説します。

1.企業所得税の概要

企業所得税の課税主体は居住者企業と非居住者企業に分かれますが、ここでは居住者企業の場合に限定して説明します。居住者企業とは、中国の会社法に基づいて設立された企業、もしくは外国の法令に基づいて設立された企業についてその実際の管理機構が中国国内に存在する企業を指しますが、日本からの投資により中国国内に設立された中国現地法人はすべて居住者企業となります。なお、中国の法令により経営が認められる日本企業の中国支店(分公司)や駐在員事務所についても企業所得税法上の居住者企業となります。

居住者企業は、暦年の一年間で稼得した利益に対して企業所得税が課税されます。この企業所得税が課税される利益のことを課税所得といいますが、この課税所得は企業所得税法及び関連法令(以下、「税法」とします。)に基づいて計算することとされており、会計上の利益とは必ずしも一致するものではありません。通常は、課税所得は、会計上の利益に対して税法に基づく調整を行うことにより算出することとなります。また、企業所得税の基本税率は25%とされていますが、税法により一定の条件を満たす場合の軽減税率が予定されています。

◇企業所得税の税額計算方法

【税額】 = 【課税所得】(※1) × 【税率】(※2)

(※1)【課税所得】=(会計上の利益)±(税法に基づく調整)

(※2)基本税率は25%、税法による軽減税率あり

2.年末に向けた注意点

(1)損金算入限度額

上記の通り、課税所得は会計上の利益から税法に基づく調整を行って算出しますが、会計上費用として計上されている支出について、課税所得の計算において調整が必要とされる項目があります。これは、一定の名目の支出については課税所得の計算上、計上に上限額が設定されていることによります。接待交際費や福利厚生費といった支出については、どの企業においても調整が必要となることが考えられるため、年末に向けてどの程度の調整が必要となり、想定される納税額の増加にどの程度の影響があるのかについて確認が必要となります。

◇損金算入限度額の例

項目(例示)限度額
接待交際費発生額の60%(ただし、営業収入の0.5%が上限)
福利厚生費賃金・給料発生額の14%
広告宣伝費営業収入の15%(超過分は翌年以降に繰り越しが可能)
公益性寄付利益総額の12% (ただし、2020年についは、新型コロナウィルスの防疫のための寄付について特別規定あり)

(2)優遇税率の適用条件

企業所得税の基本税率は25%とされていますが、税法により小規模薄利企業に対しては20%の税率が適用されることとされています。また、2019年からの3年間という期限付きの暫定措置として、条件を満たす小規模薄利企業は、課税所得100万元以下の部分については課税所得を25%に圧縮、課税所得100万元から300万元以下の部分については課税所得を50%に圧縮したうえで、20%の税率を乗じて税額を算出することが認められています。この結果、暫定措置の適用を受けられる場合の事実上の税率は課税所得に応じて5%~8.3%となりますが、この暫定措置については、課税所得が300万元を超過した場合には適用を受けることができなくなり基本税率である25%の適用をうけることとなるため、課税所得が300万元を1元でも超える場合には納税負担が大幅に増加することになります。そのため、年度末に向けて年間の課税所得の試算をおこない、課税所得が300万元に近似する場合には注意が必要となるものといえます。

(3)固定資産の処理に関する優遇措置

税法では、課税所得の計算にあたって、固定資産は税法で定める耐用年数(月数)で按分して計算される金額をもって当年の費用(支出)とすべきこととされています。そのため、当年中に固定資産を購入しても当年の費用増加に対する効果は限定的とされます。しかしながら、2018年からの3年間(2020年は適用最終年となります。)という期限付きの暫定措置として、単価が500万元以下の機械設備、器具については、購入時にすべてを費用に計上することが認められることとされています。そのため、年度末に課税所得を減らさなければならない事情がある場合には、機械設備もしくは器具に対する設備投資を前倒しして行うことにより、その効果を得られることとなります。

この暫定措置の適用を受ける場合、当年の課税所得を減らすものの、翌年以降は当該固定資産に関する費用計上ができなくなるため、この分課税所得が増加することとなります。そのため、暫定措置の適用による有利性の判定は、翌年以降の経営計画も考慮しながら判断すべきことになるものといえます。

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