【国際税務教室】 所得拡大税制の対象となる雇用者の範囲 

 個人の所得の拡大を図ることを目的とした、企業が給与等の増加額に応じて控除を受けることができる税制の特例措置(給与等の引上げ及び設備投資を行った場合等の法人税額の特別控除 租税特別措置法第42条の12の5(以下、「所得拡大税制」とします))が活用されています。

 所得拡大税制は、一定の要件の下で雇用者の給与等を増額した企業において適用することができますが、企業の雇用者の中には、国内の事業所に勤務する者だけではなく、海外の事業所や子会社などに赴任している者も存在したり、国内の事業所に勤務する者においても、日本人労働者のみでなく外国人労働者も存在したりします。所得拡大税制の適用に際して、どこまでの雇用者を計算の対象とするのか、その範囲について迷う場合も少なくありません。

 所得拡大税制における雇用者とは、「国内雇用者」とされ、具体的には、法人の使用人(当該法人の役員と特殊関係人、及び使用人兼務役員を除く)のうち、① 国内の事業所に勤務する雇用者として、② 国内に所在する事業所につき作成された労働基準法第108条に規定される賃金台帳に記載された者とされています。したがって、海外赴任者は、国内の事業所に勤務する者ではないことから、当該特例措置の計算の対象外とされます(※1)。また、使用者はすべての労働者について、各人別に賃金台帳を作成する義務がある(※2)事から、例えば、「技能実習」、「特定技能」などの在留資格により、有期労働契約により就労する外国人おいても、当該特例措置の計算の対象となります。(※1)一時的に海外出張をしている者など、海外で勤務を行っている場合においても、国内に所在する事業所につき作成された賃金台帳に記載される者は計算の対象となります。(※2)労基法108条、労基規54条

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