【国際税務教室】 在留資格と納税義務の範囲

 政府により外国人労働者の受入れが推進されていることもあり、外国人労働者が増加傾向にあります。就労する外国人労働者の納税義務を考える場合、迷う場合も少なくありません。

 所得税法上、居住者は全世界所得課税であるのに対して、非居住者は国内源泉所得のみが課税対象とされます。すなわち、納税義務者のステータスにより課税の範囲は異なります。所得税法上、居住者・非居住者の判定(以下、「居住形態の判定」とします)は何でされるのでしょうか。

 外国人は、出入国管理及び難民認定法により、入国審査官から与えられた在留資格に定められる活動内容と在留期間に従って、日本に在留することになります。したがって、適法な就労を前提とすれば、外国人労働者は、在留資格により認められた活動範囲と在留期間の中で就労していることから、在留資格を基準として、当該外国人労働者の居住形態の判定を行おうとするケースも目にします。しかし、居住形態の判定と在留資格との間には、直接的な関係はありません。したがって、居住形態の判定は、在留資格の有無や在留資格に定められる活動範囲と在留期間により、画一的にされるものではありません。居住形態の判定は、その者の「住所(※1)」もしくは「居所(※2)」の有無によってなされます。裁判例によると、それらは、その者の職業、居住する場所、家族の状況等も踏まえた総合的な判断によるとされています。したがって、在留資格は、居住形態の判定に際してひとつの基準となり得ますが、それのみで居住形態の判定がなされるものではありません。(※1)民法上の「住所」借用概念とされ、「生活の本拠」を指します。(※2)「生活の本拠」ではないが、相当期間継続して居住するところを指します。

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