個人所得税 総合所得の確定申告に向けた注意点 について

今年も3月1日より中国での個人所得税の確定申告が開始されます。今回の確定申告では2020年中の総合所得に関する申告が行われますが、2020年は新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、駐在員であっても中国での滞在期間が短かったというケースが多々発生しているものと思われます。このような中、2020年の確定申告では例年以上に注意して個人所得税の精算を行う必要があるものと考えられます。今回は、総合所得の確定申告において注意すべきポイントについて説明します。

1.総合所得に関する確定申告の制度

個人所得税法の改正により2019年1月1日より給料・賃金所得、労務報酬所得、原稿料所得、特許権使用料所得の四種類の所得を総合所得と分類し、総合所得については一年間(暦年)の所得の総合計金額に対して課税することとされています。総合所得に属する所得は、一次的には各所得に関する支払いを行う企業など(以下、「所得の支払者」とします。)が個人所得税の源泉徴収を行いますが、一年間が終了したのちに所得を得た個人が確定申告を行うことによって一年間の個人所得税の税額を確定させ、これと源泉徴収して納税された税額との差額(以下、「年間納税差額」とします。)の調整を行うことが想定されています。

なお、非居住者が総合所得に分類される所得を得た場合には、所得の支払者が源泉徴収して納税することにより納税が完了しますので、確定申告による調整は予定されていません。総合所得の確定申告は、居住者が以下の条件に適合する場合に行うべきこととされています。(以下は、2020年に出された通達に基づきます。)

◇総合所得に関する確定申告の対象者

「年間納税差額」の計算方法年間納税差額 = 個人所得税額 – 年間既納税額 (※) (プラスの場合には「納付」、マイナスの場合には「還付」
確定申告が不要とされる者年間納税差額がプラスであるが、総合所得に関する収入が12万元以内の者年間納税差額がプラスであるが、要納付額が400元を超過しない者年間納税差額がない、もしくはマイナスであるが還付申請を行わない者
確定申告が必要とされる者年間納税差額がマイナスであり、還付申請を行う者総合所得に関する収入が年間12万元以上であり、かつ年間納税差額がプラスで要納税額が400元を超過する者

(※)「既納税額」とは、所得の支払者によって源泉徴収して納税された税額を指します。

2.注意すべきポイント

(1)駐在員の居住者、非居住者の判定

個人所得税は、居住者、非居住者によって異なる課税方法で課税されます。個人所得税法の規定によると、日本に生活の本拠を置く駐在員の場合には、一般的には一年間(暦年)の中国滞在日数が183日以上である場合には居住者、183日未満である場合には非居住者とされます。2020年は新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、日本への一時帰国の日数が長くなり、駐在員であっても中国滞在日数が183日未満となるケースも多く見受けられます。183日未満となる場合には、駐在員であったとしても中国では非居住者として課税されることに注意が必要です。

(2)非居住者の場合

非居住者は、原則として国内源泉所得のみが課税所得となります。非居住者に対する課税は、原則として所得の支払者によって源泉徴収及び納税されて完了しますが、これは月単位の所得に対して行われます。給料・賃金の源泉地は労務提供地とされていますので、1ヶ月の内に中国に滞在していた日数に相当する部分の給料・賃金についてのみ課税されることとなります。例えば、駐在員であったとしても中国国内に滞在しない月の給料・賃金については、すべてが国外源泉所得となり中国では課税されないこととなります。(ただし、駐在員が総経理・副総経理等の高級管理職である場合には、中国国内で支給されている給料・賃金については課税所得となる点に注意が必要です。)

このように駐在員が非居住者と判定される場合には、上記のような基準で個人所得税の課税が行われることになりますが、赴任先の中国現地法人などにおいて、財務担当者が居住者として申告している場合もあるため、この確定申告の機会に確認を行われる必要があるものといえます。

(3)居住者の場合

居住者については、以下で述べる例外を除いて、年内に中国国内・国外で稼得したすべての総合所得に属する所得に対して課税が行われます。ここでいう例外とは、中国での連続滞在期間が6年未満の場合に限り、国外の企業などから支払われた(かつ負担している)国外源泉所得については課税を免除されることを指します。駐在員の場合、赴任を命じている日本本社から留守宅手当等の名目で給料・賃金の支払いを受けているケースがありますが、この日本本社から支払いを受けている給料・賃金に関して、1ヶ月のうち日本滞在日数に相当する部分については国外で支払われた国外源泉所得となり、上記の条件を満たす限りにおいて中国での課税を免れることとなります。(ただし、この部分について現地法人が負担している場合は除かれます。)新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、2020年に中国居住者とされる駐在員であっても、通常の年よりも日本に滞在する期間が長い場合が見受けられます。このような場合でも、所属する中国現地法人などにおいて、財務担当者が中国支給額及び日本支給額の全額をもって源泉徴収の申告を行っている場合もあるため、この確定申告の機会に確認を行われる必要があるものといえます。

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