個人所得税等の源泉徴収手続きに関する手数料収入について

上海では1月~3月の間に2020年の税務上の三代手続費用に関する申請手続きが受け付けられます。三代手続費用とは、企業などの単位や自然人(以下、「手続義務者」とします。)が法令によって徴税上の手続きの一部を担う義務が生じる場合において、政府が手続義務者に対して法令に定められた手続費用を支払うことを総称する用語となります。今回は、三代手続費用のうち、一般の企業に関係がある税金の源泉徴収手続に関する手数料収入に関する注意事項を説明します。

1.三代手続費用とは

企業などの単位や自然人が、税法等の法令上の規定により、源泉徴収納税(代扣代缴)、代理徴収納税(代收代缴)、委託代理徴収(委托代征)のいずれかの方法により、徴税上の手続きの一部を担う義務が生じる場合には、法令により政府が手続義務者に対して一定の手続費用を支払うこととされており、これを三代手続費用といいます。一般の企業にとっては、従業員への給料の支給や労務提供者(個人)への労務費の支払にあたって必要となる個人所得税の源泉徴収納税手続、非居住者企業に対する役務提供費用やロイヤルティなどの支払にあたって必要となる増値税及び企業所得税の源泉徴収手続などが対象となり、実際納税額の2%が政府から手数料として支払われます。

なお、三代手続費用の支払いを受けるためには、一定の申請が必要とされており、上海では1月~3月の間に前年1年間の三代手続費用に関する申請が行われます。

◇一般の企業にかかわる三代手続費

対象となる主な手続支払われる手数料
企業が従業員に支払う給料に関する個人所得税の源泉徴収手続納税された個人所得税額の2%
企業が労務提供者に支払う労務費に関する個人所得税の源泉徴収手続納税された個人所得税額の2%
企業が非居住者企業に対して支払う費用(役務提供費、ロイヤルティ等)に関する企業所得税、増値税の源泉徴収納税手続き納税された企業所得税額、増値税額の2%

2.三代手続費用に関する企業の処理

企業が支払いを受けた三代手続費用は、手数料収入として企業の営業外収入に計上されます。また、上海市税務局の見解によれば、この手数料収入は増値税の課税取引となりますので、各企業の増値税の課税ステイタスに応じて、一般納税人であれば6%、小規模納税人であれば3%(2021年1月現在は軽減税率1%が適用)の増値税額が含まれるものとして税務処理が行われる必要があります。

なお、企業が支払いを受けた三代手続費用について、これが税務申告を担当した担当者個人に帰属するという見解が散見されます。上記の通り、三代手続費用は、法令上源泉徴収納税等の手続き行うことが義務付けられる単位もしくは自然人に対して支給されることとされています。一般の企業に関係のある個人所得税や企業所得税等の源泉徴収納税手続きは、法令により、関連する支出を行う企業に対して義務付けられていますので、これに対応する三代手続費用についても、手数料収入は企業に対して帰属するものと解釈されることになります。

3.注意事項

企業に支払われた三代手続費用に関して、この金額を税務申告担当者に支給しなければならないものとして運用されるケースが散見されます。

上記の通り三代手続費用に関する手数料収入は、源泉徴収等の手続きを行う企業に帰属します。一方で、個人所得税の源泉徴収に関して「個人所得税源泉徴収申告管理弁法(試行)」という規定が存在しておりますが、その中で、企業は、企業に支払われた三代手続費用を“「税務手続能力の向上」や「税務担当者への奨励金」として使用することができる”ものと規定されています。この点で、三代手続費用の用途は特定されているのではないか、とも考えられます。しかしながら、当該規定は個人所得税の源泉徴収に関する事項を規定するのみであり、企業所得税や増値税の源泉徴収において適用されるものではありません。また、当該規定の文言からも、一般的な解釈としては、この規定をもって企業に支払われた三代手続費用の使用用途が特定されるものとは考えられていません。このように、歴史的な経緯はさておき、現在において企業が三代手続費用に相当する金額を税務申告担当者に支給しなければならない根拠となるような明確な法令は存在していない点に注意が必要といえます。

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