【国際税務教室】 役員報酬の手取契約(グロスアップ計算)

国内においては、契約は取引金額の総額によって行うことが一般的といえます。労働契約においても、労使の合意は賃金の総額について行うことが通常です。他方、海外の取引先と契約を行う場合、契約金額は総額ではなく、税引き後の手取金額とする、いわゆる「手取契約」を締結する場面が多く見られます。労働契約においても、使用者から、賃金の総額ではなく所得税や社会保険料等の諸控除を差し引いた後の手取り額についての合意を求められるケースも見られます。手取契約を締結する場合、賃金総額はどのように計算されるのでしょうか。そのような場合には、手取金額から控除されている社会保険料や所得税等を込みとした金額に逆算をすることにより総額を求めるといった、いわゆる「グロスアップ計算」を行うことが必要となります。すなわち、控除する所得税や社会保険等の金額が増減をする場合においても、賃金総額を増減させる計算をすることにより、約束した一定の手取額がもたらされます。

 日本の法人の役員として海外から人材を招聘する際、役員報酬について、いわゆる手取り契約を行うケースも想定できます。その場合、法人税法上の定期同額給与の該当性について迷う場合も見受けられます。法人税法上、損金として認められる役員報酬のなかで、定期同額給与とは、従来は、役員報酬の総額(支給額)が同額である必要がありました。しかし、平成29年税制改正により、手取額(※)が同額となる役員報酬も定期同額給与として取り扱われるようになっています。

(※)支給額から、源泉所得税、特別徴収税される地方税、社会保険料等を控除した残額とされます(法令69条2項)。 

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