新赴任者の中国への渡航に関する最新情報について

新型コロナウィルス(COVID-19)の世界的な感染拡大に対して、中国では2020年3月28日以降、外国人の入国を大幅に制限する措置(以下、「外国人入国制限措置」とします。)がとられています。今回は、中国現地法人や駐在員事務所への新規赴任者の中国への渡航に関する最新状況と注意点について解説します。(以下、「現時点」は、本レポート執筆時点である6月20日を基準とします。)

1.新赴任者の中国への赴任に必要な手続き(平常時)

中国の現地法人もしくは駐在員事務所への新赴任者が日本から中国に赴任するための法律上の手続きは以下のような流れとなります。

◇中国への赴任に必要な手続き

 手続き
(1)首席代表、代表の登記 (駐在員事務所の場合のみ)
(2)「工作許可通知」の申請(※)
(3)Zビザ申請及びZビザによる入国(※)
(4)「工作許可証」の申請
(5)「居留許可(工作類)」の申請

(※)駐在員事務所の首席代表については(2)(3)の手続きを省略することが認められており、Mビザでの渡航(もしくはビザなし渡航)後に(4)(5)の手続きを行うことが可能です。

 新赴任者は就業目的で中国に入国し、就業(工作)のために中国に滞在することになりますので、上記のようにZビザ(就業目的)で入国し、居留許可(工作類)を申請して中国での滞在を開始することになります。

2.現時点における中国への渡航方法

現時点では、外国人入国制限措置のもと、外国人は以下の場合に限り中国への入国が認められます。なお、日本国パスポート保有者に対して認められていたビザなし渡航については運用が停止されています。

◇外国人入国制限措置にかかわらず中国への入国が認められる場合

入国条件
2020年3月28日以降に発給された有効な「ビザ」を保有している場合
2020年3月28日以降に発給された有効な「居留許可」を保有している場合

現時点においてビザ申請が認められるのは、以下の場合に限られます。

◇外国人入国制限措置にかかわらずビザ申請が認められる場合

ビザ申請が認められる入国目的備考
Ⅰ)必要な経済貿易、科学技術等の活動に従事する目的 (M)「招聘状」が必要
Ⅱ)緊急の人道主義の必要に基づく目的 (F) 
Ⅲ)中国の法人もしくは駐在員事務所への赴任(就業)目的 (Z)「招聘状」及び「工作許可通知」が必要
Ⅳ)中国産ワクチンの接種を完了していることを前提条件として、中国での生産再開、職場復帰を必要とする人員の各種入国目的 

このうち、Ⅰ)及びⅢ)については、中国の政府機関が発行する招聘状(邀请函)が必要となります。招聘状は、中国国内の法人等が主体となって政府機関に発行を申請することになりますが、地域によって申請方法が異なるため、詳細については事前に法人等が所在する地域の外事弁公室に確認が必要になります。なお、現時点では、政府機関に対して招聘状を申請したとしても、実際に招聘状が取得できるケースは限定的となっているようです。また、現時点においては、渡航者の「家族」に対する「招聘状」は、原則として発給されていません。

3.現時点における新赴任者の中国への渡航の注意点

1.で述べたとおり、法律上、新赴任者の中国への渡航にあたってはZビザの申請が必要となります。(事前手続きとして、中国側での「工作許可通知」の申請が必要。)また、2.で述べたとおり、現時点においては、Ⅲ)において、新赴任者の中国への渡航に必要なZビザの申請が認められています。そのため、現時点における新赴任者の中国への渡航にあたっては、1.で述べた法律上の手続きに基づいて渡航することができる状態にあるものと言えます。

一方、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、一時期、ビザ申請手続きにおいてⅢ)が認められない時期がありました。このため、出入国管理局は、就業目的で渡航する外国人への便宜を図るため、特別措置として、新規赴任者がⅠ)で申請できるMビザ(もしくはFビザ)で渡航し、居留許可(工作類)申請を行うことを認めています。(現時点においても継続。)確かに、Mビザで渡航し、居留許可(工作類)を申請することができる現在の状況下では、(2)の工作許可通知のための申請手続を省略できるため、赴任者の渡航時期を早める効果があります。しかしながら、法律上は、赴任目的で中国に入国した段階から就業は開始していることとなり、Mビザで入国している場合には、入国自体が不適法、目的外滞在といった問題を抱えることとなります。確かに、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う混乱時期においては、上記のような問題を抱えつつ渡航することもやむを得なかったものと考えられますが、手続き上Zビザ申請が認められる現時点においては、適切にZビザを申請して渡航する過程を踏むことが望ましいものと言えます。

最近の記事

  • 関連記事
  • おすすめ記事
  • 特集記事
PAGE TOP