インボイス制度の導入と従事分量配当

 2023年(令和5年)10月1日から、消費税の仕入税額控除の方式が適格請求書等保存方式(以下、「インボイス制度」とします)に変更されます。インボイス制度の導入により、従事分量配当制をとる農事組合法人は大きな影響を受けることから、事業計画の再検討を行うなど、対策が求められます。

 従事分量配当制をとる農事組合法人の場合、従事分量配当が課税仕入れとされる(※1)ことから、消費税の課税事業者となり、一般課税方式による申告を通して、消費税額の還付を受ける法人も少なくありません。

 現行されている消費税の仕入税額控除方式(区分記載請求書等保存方式)においては、一定の帳簿及び請求書等の保存が仕入税額控除の要件とされており、取引相手が消費税の課税事業者であるか否かは、仕入税額控除との直接的な関係はありません。したがって、従事分量配当制をとる農事組合法人にとって、従事分量配当を支払う組合員が消費税の免税事業者であるとしても、一定の帳簿及び請求書等を保存している限りにおいて、当該従事分量配当は仕入税額控除の対象取引とされます。

 他方、インボイス制度の下では、請求書等に代えて、税務署の登録を受けた課税事業者が発行する適格請求書(いわゆる「インボイス」)等の保存が、仕入税額控除の要件とされます。したがって、この制度の導入後は、免税業者との取引は(免税事業者が適格請求書の発行ができない事から)仕入税額控除の対象となりません。 従事分量配当を支払う組合員は、通常、ほとんどが免税業者であると想定されます。したがって、インボイス制度の導入後は、免税事業者である組合員の従事分量配当が、仕入税額控除の対象の取引とならないことから、消費税の納付税額が増加する(※2)ことに注意が必要です。

(※1)平成24年2月27日 東京国税局審理課長 回答 

(※2)影響を緩和するため、制度導入後3年間は80%、その後の3年間は50%を控除可能とする経過措置が設けられています。

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