デジタル課税(市場国課税)と最低税率課税への合意

 2021年7月1日、OECDから、130の国・地域が、国際課税改革のための新しい枠組みの創設に合意したとの声明が発表されました。この合意は、これまでの国際課税のルールを改訂するものとされ、①「市場国による課税のためのルール」(Pillar One ―物理的拠点がなく販売を行ったとしても、市場国に課税権の分配をするもの。以下「市場国課税」とします)と、②「世界のどこかで最低税率で課税を行うためのルール」(Pillar Two ―所得の源泉地における実効税率が15%未満であっても、最終親会社で最低税率まで合算課税を行うもの等。以下「最低税率課税」とします)の二つの柱から構成されています。

 デジタル化した経済下では、市場国に物理的拠点を置くことなく事業展開が可能となります。そのような事業に対して、物理的な拠点の有無を基礎として各国が課税権を分配するといった、これまでの国際課税のルールを適用する場合、市場国に適切な課税権が分配されないとう問題が生じていました。また、デジタル化した経済下では、事業の核となる無形固定資産は移転が容易であるという特徴を利用して、それを軽課税国へ移転させることが可能となります。これにより、デジタル化した経済下では、市場国で課税されないといった問題に加えて、利益が軽課税国へ移転されやすいといった二つの問題が議論されてきました。今回の合意は、これらの問題に対処するため、国際課税に「市場国課税」と「最低税率課税」の二つのルールを導入し、多国籍企業がデジタル化した経済下の中、どこで事業を行ったとしても、公平に税を負担することになる制度の構築を目指すものといえます。

 具体的な実施計画は、本年10月に開催されるG20で決定される予定とされています。

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