インボイス制度の導入と農産物直売所(委託販売)

農産物直売所は、委託販売方式にて運営されている例が多く見られます。令和5年10月1日から導入されるインボイス制度の原則からすれば、委託販売の場合、委託者(農業者)が購入者にインボイスの交付を行う必要が生じます。しかし、それは困難であることから、インボイス制度においては、販売を受託する媒介者(直売所)が、委託者(農業者)に代わってインボイスを発行することを可能とする特例(以下、「媒介者交付特例」とします。)が用意されています。直売所の場合、購入者の商品は複数の農業者の農産物が混在していることが通例です。媒介者交付特例においては、そのように複数の委託者の商品を纏めて販売した場合であっても、一括して一枚のインボイスによって交付することが認められています(※)。しかし、販売した商品の中に、免税事業者である委託者(農業者)の商品が存在する場合には、媒介者交付特例の適用が、委託者と媒介者の双方がインボイスの発行事業者であることが要件とされていることから、インボイスの交付はできません。そのような場合には、媒介者(直売所)が受託者(農業者)ごとに取引を計算し記載を行った上で、課税事業者の氏名及び登録番号を記載したインボイスを発行するといった、代理交付により対応することが可能です(※)。しかし、この対応には大規模なシステム改修が必要と考えられ、現実的ではないとも考えられます。

実務的には、直売所の購入者の中で、インボイスを必要とする顧客は限定的と考えられるとこから、インボイスを必要とする顧客に限定して、レジシステムとは別途インボイスを発行するためのシステムを構築する、もしくは、直売所の取引を委託販売方式から消化仕入方式(顧客の購入時点で、直売所が農業者から農産物を買い取るといった形式)へと契約関係の見直し、直売所がインボイスを発行するなど、対応方法についての検討が必要といえます。

(※) 国税庁:インボイス制度に関するQ&A 問40

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