所得税法上の為替差損益の取り扱い

 20年ぶりのドル高・円安となるなど、円が記録的な安値をつけている現在。所有する外貨を円転する取引も散見されます。その場合、税務上の取り扱いに注意が必要です。

 所得税法上、居住者が外貨建取引を行った場合には、取引時の外国為替の売買相場により換算した金額により所得の金額を計算する(※1)とされていることから、円転時の額と外貨の購入額との差額は所得(※2)として認識する必要があります。したがって、例えば、銀行の外貨預金を解約し、円で払出を行った場合は、所得税法上、為替差損益を認識する必要があります。

 他方、外貨預金を解約し、同一の通貨で再度預入れる場合にも、為替差損益を認識する必要があるのでしょうか。法令によれば、同一の金融機関に、同一の外国通貨で、継続して預入れる場合には、(収入が実現していないことを理由として)外貨建取引に該当しないと例示されています(※3)。したがって、同一の外国通貨で、別の金融機関の預金に預入を行っている場合においても、収入が実現していないことから、為替差損益を認識する必要はありません(※4)。

 これに対して、外貨預金を解約し、同一通貨建ての投資信託を購入するなど、通貨は同一であったとしても新たな資産への投資を行った場合や、別の通貨建ての外貨預金に預入するなどした場合には、収入が実現したものと認識され、それら取引は外貨建取引に該当することから、為替差損益を認識することが必要となります。

(※1)所法57条の3第1項 (※2)為替差損益の所得分類は雑所得という考え方のほか、譲渡所得という見解もあります。(※3)所令167条の6第2項(※4)国税庁HP https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/39.htm

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