2022年上海市の最低賃金と社会保険基数について

 上海市では、一昨年(2020年)から、社会保険及び住宅積立金基数の変更は7月1日からとされています。また、これに合わせて最低賃金の変更がある場合には、7月1日より適用されることになっています。今回は、7月1日から変更となる2022年の上海市の最低賃金と、社会保険料及び住宅積立金の基数について説明いたします。

1.2022年の『最低賃金』

 中国では、『最低賃金』は省(及び直轄市)ごとに確定されます。直轄市である上海市では、『最低賃金』は一律に設定されますが、省においては、省の中の各都市を一定の基準で分類し、この分類ごとに『最低賃金』が設定されるのが一般的です。

 会社は、賃金の支給に当たって、個人が負担すべき社会保険料や個人所得税を会社が源泉徴収、納付しなければなりません。『最低賃金』として規定される賃金は、これら社会保険料や個人所得税を控除した後の手取金額を意味します。

 そのため、会社の従業員に対する最低限の給料負担額は、『最低賃金』に社会保険料(住宅積立金を含む)の個人負担額、及び個人所得税額を加算した金額となります。

2.社会保険料の基数の変更

 上海市では、一昨年(2020年)から毎年7月1日に社会保険料、住宅積立金の基数が変更されることとなりましたが、この基数は、各個人が前年(1月1日~12月31日)に支給を受けた賃金(以下、「年収」とします。)の月平均の金額とされます。年収には、賞与や特別一時金、残業代や諸手当も含まれます。

 一方、社会保険料の基数の最上限及び最下限について、上海市では、上海市の前年の『平均月額賃金』の3倍を基数の最上限に、60%を最下限に設定しています。この『平均月額賃金』は、統計局が発表する前年の『平均賃金』を基に12ヶ月で按分して計算され、毎年基数が変更される7月1日前後に人力資源と社会保障局より発表されます。また、住宅積立金の基数の最上限及び最下限については、上海市では、上海市の前々年の『平均月額賃金』の3倍を基数の最上限に、前々年度の最低賃金を最低限に設定しています。

 なお、上記を前提としつつも、新型コロナウィルス感染拡大による企業への影響を考慮し、2022年7月1日から適用される社会保険料基数の最上限は34,188 元(平均賃金の3倍で上記規定通り)、最下限は6,520 元が適用されることとされています。

3.従業員の雇用にかかる最低限の人件費の変動

会社が上海で従業員を一人採用することにより発生する人件費の最低限度額は、上記の「会社の給料負担額(給料総額)」と「会社の社会保険料(住宅積立金を含む)負担額」を合計した金額となります。この人件費の最低限度額は、変更前に対して約3.6%の上昇となります。今年は、最低賃金の変更がなかったため、人件費の最低限度額の上昇率は例年と比較して低く抑えられているものといえます。(2021年:約7.6%、2020年:変化なし、2019年:約5.3%、2018年:6.9%)。

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