自己が育成・成熟させた生物の取得価額の取扱い

 農業においては、成熟した繁殖牛や搾乳牛、成木となった果樹など、特有な減価償却資産があります。生物(※1)とされるこれらの減価償却資産は、購入により取得する場合もありますが、自己が育成・成熟させる場合もあります。自己が育成・成熟させた生物の場合、取得価額はどのように認識するのでしょうか。

 減価償却の基礎となる取得価額は、資産の取得形態に応じて定められています。その中で、自己が育成・成熟させた生物の取得価額についてみれば、㋐ 種付費・出産費・種苗費等の価額(引取費用含む)㋑ 育成・成熟させるために要した飼料費、肥料費等の材料費に、労務費及び経費の額を加えた価額、㋒ その他、事業の要に供するために直接要する費用の額の合計額とされています(※2)。これら、㋐㋑㋒の費用は、販売される農畜産物(棚卸資産)に要する費用と共通することが一般的です。したがって、㋐㋑㋒の合計額を算出するためには、それら共通する費用を、育成・成熟に係る費用と、販売される農畜産物に係る費用のそれぞれに配分するといった作業が必要となります。

 実務的には、① 期中は育成・成熟に係る費用と、販売される農畜産物に係る費用とを区別することなく、すべてを一括して費用勘定で経理しておき、② 決算整理において、育成にかかる原価を按分して「育成費振替高(製造原価報告書末尾の控除項目)」として製造原価から除外し、「育成仮勘定(資産勘定科目)」に振り替えを行います。そして、③ 成熟した生物については、成熟日において「育成仮勘定」から「生物」勘定に振り替えを行い、減価償却を開始することになります(※3)。

(※1)法令13条九号、所令6条九号(※2)法令54条1項三号、四号、所令126条1項三号、四号(※3)一般社団法人 全国農業経営コンサルタント協会 「農業の会計に関する指針」 5(2)

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