中国の個人所得税では、2019年1月1日より総合所得年度課税制度が導入されています。総合所得の課税においては、総合所得に関する支払いを行う企業などによる源泉徴収と、総合所得に関する収入を得た個人による確定申告とにより納税が行われます。このうち確定申告は、課税年度(暦年1月1日~12月31日)終了後、3月1日~6月30日までの間に行うこととされています。今回は、この個人所得税・総合所得課税における確定申告について説明します。
1.総合所得に対する課税 中国の個人所得税は、個人が稼得する所得を以下のように分類して課税することとされています。
■個人所得税が課税される所得の分類
1.給料、賃金所得 | 6.利息、配当等所得 |
2.労務報酬所得 | 7.財産賃貸所得 |
3.原稿報酬所得 | 8.財産譲渡所得 |
4.特許権使用料所得 | 9.偶然所得 |
5.事業所得 |
上記の所得のうち1~4が総合所得とされ、総合所得については一年間(暦年)の所得の総合計金額に対して課税することとされています。総合所得に属する所得は、一次的には各所得に関する支払いを行う企業など(以下、「所得の支払者」とします。)が個人所得税の源泉徴収を行いますが、一年間が終了したのちに所得を得た個人が確定申告を行うことによって一年間の個人所得税の税額を確定させ、これと源泉徴収して納税された税額との差額(以下、「年間納税差額」とします。)の調整を行うことが想定されています。
なお、非居住者が総合所得に分類される所得を得た場合には、所得の支払者が源泉徴収して納税することにより納税が完了しますので、確定申告による調整は予定されていません。
2.総合所得に関する確定申告
総合所得の確定申告は、総合所得を得た個人が中国「居住者」であり、以下の条件に適合する場合に行うべきこととされています。
◇総合所得に関する確定申告の対象者
「年間納税差額」の計算方法 | 年間納税差額 = 個人所得税額 – 年間既納税額 (※) (プラスの場合には「納付」、マイナスの場合には「還付」 |
確定申告が不要とされる者 | 年間納税差額がプラスであるが、総合所得に関する収入が12万元以内の者年間納税差額がプラスであるが、要納付額が400元を超過しない者年間納税差額がない、もしくはマイナスであるが還付申請を行わない者 |
確定申告が必要とされる者 | 年間納税差額がマイナスであり、還付申請を行う者総合所得に関する収入が年間12万元以上であり、かつ年間納税差額がプラスで要納税額が400元を超過する者 |
(※)「既納税額」とは、所得の支払者によって源泉徴収して納税された税額を指します。
3.確定申告の申告期限及び申告方法 確定申告の申告期限は、課税期間(1月1日~12月31日)が終了したのち、翌年の3月1日~6月30日までとされています。また、申告方法は、以下のような方法が予定されています。
◇確定申告の申告方法
1. 納税者自身による申告 | 個人所得税アプリを使用したスマホ等端末からの申告、自然人電子税務局(ウェブサイト)からの申告を推奨しますが、郵送方式もしくは税務局窓口における申告を選択することも可能とされています。 |
2. 源泉徴収を行う単位(会社等)による代理申告 | 課税期間が終了したのち、翌年の4月30日までに、納税者が、書面もしくは電子的な方式により単位(会社)に対して申請を行う場合には、単位(会社等)確定申告を代理することができることとされています。ただし、申告に必要な情報、資料等の真実性については、納税者が責任を負います。 |
3. 納税者から授権を受けた代理人による代理申告 | 納税人は代理人との間で授権委託書を作成する必要があります。 |