婚姻の成立と所得税法、相続税法上の配偶者

 日本人同士が国外でその国の法律の定めに従った婚姻の方式により婚姻を挙行したものの、夫婦別姓の選択などの理由から日本では戸籍法所定の届出をしていない場合、所得税法、相続税法上(以下、「税法上」とします)配偶者として認められないのでしょうか。

 税法上、配偶者は民法と同様に法律上の婚姻関係にある者と解されます。法律上の婚姻関係となるためには、民法に規定される婚姻の実質的成立要件(以下、「実質要件」とします)と形式的成立要件(以下、「形式要件」とします)を満たす必要があります。戸籍法所定の届出は婚姻の形式要件とされています。しかし、日本人同士が国外で行う婚姻は、国際私法により適用すべき準拠法が決定されます。(日本の国際私法である)「法の適用に関する通則法」によれば、実質要件には、各当事者の本国法であるわが国の民法が適用され、他方、形式要件には、婚姻挙行地の外国法が適用されることになります。それからすれば、民法の形式要件である戸籍法所定の届出を行っていない場合においても、日本人同士が国外でその国の法律所定の婚姻の方式に従い婚姻を挙行した場合には、形式要件を満たしているものと考えられます。そのような場合、民法に規定される実質要件を満たしている限りにおいて、婚姻は有効に成立しているといえ、そのような立場に立つ裁判例が存在します(※1)。法律上、有効に成立する婚姻である限り、税法上においても配偶者として扱われるものと考えます(※2)。

(※1)東京地方裁判所 2021(令和3)年4月21日判決 (※2)戸籍法所定の届出を済ませていない状態では、婚姻関係について公証を受けられないことから、都度、局面に応じて法律上有効に成立する婚姻関係であることを主張し、証明することが必要になるものと考えます。

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