2021年の開始にあたって注意すべき優遇税制等 について

新型コロナウィルスが発生した2020年は、新型コロナウィルスの感染拡大による経済へのダメージを減少させるため、企業負担を減少するための各種の優遇税制等の措置が取られてきました。2020年が終わり、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う多くの優遇税制等は終了することとされていますが、今後の感染拡大の状況及び経済へのダメージの状況次第では延長等の措置が取られる可能性も考えられるところです。今回は、2021年の開始に伴い、特に小規模企業が注意すべき優遇税制等について説明します。

1.注意すべき優遇税制等

(1)増値税

増値税の納税主体は一般納税人と小規模納税人に区分されます。このうち、小規模納税人は売上高に対して一律に3%の増値税が課税されることとされています。小規模納税人は、比較的小規模な企業新が多いことから、新型コロナウィルスの感染拡大による小規模な企業への影響を考慮し、2020年3月~2020年12月に期限を限定して、小規模納税人に対する増値税の税率を1%に減じる措置が講じられてきました。本レポート作成時点(1月20日)現在において、この措置を延長して2021年にも適用するとの発表はありません。

(2)企業所得税

企業所得税に関しては、新型コロナウィルスの感染拡大より前から、経済の活性化を図るため、生産企業の設備投資に対する優遇措置、及び中小企業の企業所得税負担を減少させる優遇措置などが施行されていました。そのため、新型コロナウィルスとの関係では、特に減税による企業所得税負担を減少する措置を講じるのではなく、新型コロナウィルス感染拡大の阻止に向けた企業の支出を積極的にバックアップするための優遇措置が取られています。例えば、企業所得税の関係法令では第三者への寄付に関する支出は公益性の寄付に限り、その年の利益総額の12%以内に限定して収入から控除することを認めていますが、新型コロナウィルスの防疫に必要な資材及び金銭の寄付に関しては、全額を控除できることとされています。これらの措置は、2020年度の企業所得税の課税に対して適用されることとされています。

(3)社会保険料

新型コロナウィルスの感染が拡大するなか、政府は感染拡大により企業が従業員の雇用に対して消極的になることを危惧しており、雇用の維持を図るための政策を打ち出しています。中小企業の社会保険料に関する会社負担部分の減免措置はこの政策の一部といえます。上海の社会保険にかかる社会保険料は、給料総額(正確には一年間の賞与を含めた月額平均給料総額)の50%程度と非常に重く、会社負担分はその2/3を超えます。中小企業の社会保険料に関する会社負担部分の免除措置では、住宅積立金及び医療保険(生育保険を含む)を除く社会保険料の会社負担部分の全部を免除、医療保険については2~6月までの会社負担部分を半減することとしていました。社会保険料の会社負担部分の料率は、養老保険が16%、医療保険(生育保険を含む)が10.5%、住宅積立金が7%であり、この三者が大部分を占めますが、今回の減免措置により養老保険の全額が免除されていたことにより、会社負担分は通常の半分以下となっており、これによって中小企業の人件費負担は大幅に減少しました。しかしながら、本レポート作成時点(1月20日)現在において、この措置を延長して2021年にも適用するとの発表はありませんので、中小企業の1月以降の社会保険料負担は前年に比して大幅に増加することになります。

注意すべき優遇税制等

税目内容適用期限摘要
増値税小規模納税人に適用される税率を1%とする2020.12.31小規模納税人に適用される制度上の税率は3%
企業所得税500万元以下の建物、構築物以外の固定資産について購入年に全額を費用計上することができる2020.12.31(生産企業の設備投資に対する優遇措置)
企業所得税小規模企業の課税所得100万元以下は課税所得を1/4に圧縮、課税所得300万元以下は1/2に圧縮して税額を計算することができる2021.12.31(中小企業の税負担を減少させる優遇措置) 法令上の小規模薄利企業に適用される税率は20% 小規模薄利企業の条件は、課税所得30万元以内
社会保険料養老保険、失業保険、労災保険の保険料会社負担部分の免除、医療保険及び生育保険の保険料会社負担部分の一部免除2020.12.31養老保険の会社負担部分の料率は16%、医療保険(生育保険を含む)の会社負担部分の料率は10.5%

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