外国人旅行者に対する増値税還付制度について

中国では、2015年から中国国内で商品の購入をした外国人旅行者(短期滞在者)を対象として、出国時に商品の購入の際に支払われた増値税の一部を還付する制度が実施されています。開始当初は、還付の対象となる商品を販売する商店(退税商店)がごく一部に限定されているなど制度の運用も限定的となっていましたが、時間の経過とともに退税商店の数も増加し、街中でも普通に見かけられるようになってきました。しかしながら、筆者が確認した限りにおいては、浦東空港の退税専用カウンターで手続きを行う外国人はごく少数に限られており、制度が一般的にはそれほど認知されていないのではないかとも考えられます。今回は、外国人旅行者(短期滞在者)に対する増値税還付制度(以下、“本制度”とします。)について、改めて現在の運用状況について解説します。

1.本制度の概要

日本では外国人旅行者を対象として一定の条件の下で商品を購入する際の消費税の課税を免除する制度(消費税免税店制度)が存在します。一方、中国における本制度では、外国人旅行者が中国国内で行う商品の購入に増値税(原則として13%、11%)が課税されることを前提として、一定の条件を満たす場合には商品購入時に支払われた仕入増値税額の一部を還付することとされています。このように、本制度は、既に納税された税金を国庫から還付することになりますので、必然的に購入取引自体が免税とされる日本の制度よりも手続きが煩雑となります。外国人旅行者が本制度の適用を受けて増値税の還付を受けるためには、以下のような条件及び手続きを満たす必要があります。

2.増値税還付の条件

1、対象商品の購入主体が外国人旅行者「本人」であること購入時にパスポート原本により本人確認が行われます。
2、「外国人旅行者」の属性が条件を満たしていること「外国人旅行者」とは、中国国内に“連続して”居住する期間が183日を超過しない外国人及び台湾・香港・マカオ住民とされています。
3、対象商品が「退税商店」にて購入されていること「退税商店」は税務局における登録が必要であり、登録が完了した「退税商店」には、“退税商店(TAX FREE)”が印字された標識が交付され、掲示が義務付けられています。
4、対象商品の購入時に「増値税普通発票」の発行を受けていること一般的には、「増値税普通発票」はレジとは別の窓口で特別に申請しなければ発行を受けられません。レシートを持参して、個人名義の「増値税普通発票」の発行を受ける必要があります。発行を受けた「増値税普通発票」は、還付手続きに必要となります。(電子発票の場合には、自身でプリントアウトが必要となります。)
5、対象商品を購入した「退税商店」において「離境退税申請単」の発行を受けていること増値税の還付システムに入力された情報を前提として発行される資料で、還付手続きにおいて必要となります。
6、同一の「退税商店」における対象商品の購入金額が、一日につき500元以上であることこの条件を満たさない場合には、上記「離境退税申請単」の発行を受けることができません。
7、対象商品の購入日が出国日から逆算して90日以内であること 

3.仕入増値税の還付金額、及び還付手続きの流れ

上記の条件を満たす場合において、以下の還付手続きを経ることにより仕入増値税額の一部が還付されます。還付される金額及は以下のとおり計算され、実際に還付される金額は、購入金額(税込)の9%となります。

■仕入増値税額の還付金額

還付対象仕入増値税額 = 発行を受けた増値税普通発票の金額(税込) × 11% (※1)
退税代理機構に対する還付手数料 = 発行を受けた増値税普通発票の金額(税込) × 2%
実際還付金額 = 「還付対象仕入増値税額」 – 「退税代理機構に対する還付手数料」           = 発行を受けた増値税普通発票の金額(税込) × 9% (※2)

(※1)増値税の税率13%が適用される物品の還付率は11%ですが、税率11%が適用される物品の還付率は9%となります。

(※2)増値税の税率11%が適用される物品の実際還付金額については7%となります。

■仕入増値税の還付に向けた出国時の手続きの流れ

1、「税関」における商品の照合確認手続きチェックイン前に税関の専用カウンター(離境退税海関験核:TAX REFUND CUSTOMS VERIFICATIONの表示)において、(1)対象商品の現物、(2)「増値税普通発票」、(3)「離境退税申請単」、(4)パスポートの四点を提出して申告し、「離境退税申請単」に照合確認済みの署名及び押印を受けます。 手続には(1)対象商品が必要とされることから、航空機に荷物を預ける前(チェックイン前)に手続きを行う必要がある点に注意が必要となります。 浦東空港では、第一ターミナル、第二ターミナルにそれぞれ税関の専用カウンターが設置されています。通常は、5分以内、非常に短時間で完了します。
2、チェックイン 
3、出国手続き 
4、「退税代理機構」における還付申請出国手続き後、「退税代理機構」(銀行等)において、(1)「離境退税申請単」(税関による照合確認済みの署名・押印があるもの)、(2)増値税普通発票、(3)パスポート、を提示し、上記の実際還付金額の受領手続きを行います。 還付金額が10,000元以下の場合には、「現金」もしくは「銀行振込み」のいずれかを選択することが可能ですが、10,000元を超過する場合には、「銀行振込み」のみとなります。 銀行等が「退税代理機構」に指定されており、“離境退税代理(TAX FREE)”が印字された標識が掲示されています。浦東空港では、第一ターミナル、第二ターミナルともに1ヶ所ずつ窓口が設置されています。

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