恒久的施設が負担する使用料と源泉徴収義務

 所得税法上、非居住者や外国法人に対して国内源泉所得となる使用料を支払う際には、支払者に源泉徴収義務が課せられています。海外に所在する日本企業の支店や工場などが、現地で支払う使用料に対する(日本の)源泉徴収義務の取扱いについて、迷う場合も少なくありません。

 使用料の源泉地については、権利を使用した国であるとする使用地主義といった考え方と、使用料の支払者の居住地国であるとする債務者主義といった考え方の二つが存在します。日本の国内法は使用地主義をとっています。他方、多くの租税条約においては債務者主義がとられています。わが国の国内法においては、(国内法と租税条約の規定が異なる場合には、租税条約の取り扱いによるとする)源泉置換規定が存在することから、債務者主義をとる租税条約の締結国内で日本の居住者が支払う使用料は、(国外で使用されるものであっても)国内源泉所得に該当することになります。それからすれば、使用料の源泉地について債務者主義をとる租税条約の締結国に所在する日本企業の支店や工場などが現地で支払う使用料は、原則的には、国内源泉所得として支払者に源泉徴収義務が存在することになります(※)。しかし、わが国が締結した租税条約の多くは、原則的には債務者主義をとりながらも、その使用料が使用料の受益者の恒久的施設によって負担されいている場合には、当該恒久的施設の所在地を使用料の源泉地とするといった例外規定を置いています。したがって、そのような租税条約による例外規定の適用を受ける場合には国外源泉所得となり、支払者に源泉徴収義務は存在しないことになります。 (※)置換規定の性格については、納税者の有利な場合にのみ適用される(課税できない)とする考え方も存在します。

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