CRSに基づく金融口座情報の自動的情報交換制度の現状

 国際的な租税回避や脱税に対抗するには、税務当局が納税義務者に係る国外の情報を入手する必要があります。そのため、各国が国外の情報を双方向的に交換する事が求められます。その際、効率的な情報交換が行われるよう、OECDが国際基準(共通報告基準- CRS : Common Reporting Standard 以下、「CRS」とします)を策定しています。現在、このCRSに基づく非居住者の金融口座情報(以下、「CRS情報」とします)の交換を自動的に行うといった制度に、100カ国を超える国が参加し、各国の税務当局は、原則として毎年9月末までに前年末時点のCRS情報を交換するといった運用がなされています。

 直近の国税庁の公表(※)によると、約253万件に及ぶ日本の居住者に係る(日本国外の)金融口座情報が95か国・地域から受領されています。その内訳をみると、個人口座が約250万件・残高10.9兆円。法人口座約3万件・残高5.5兆円となっています。他方、日本の非居住者(外国居住者)に係る(日本国内の)金融口座情報は、約53万件について78か国・地域の国税当局へ提供されています。 受領された情報は、海外への資産隠しや国際的租税回避行為等への適切な対応のため、課税庁において、時系列の動向分析や、国外送金調書、国際財産調書、財産債務調書といった、法定される告知書・調書制度や、既に保有されている情報と併せて分析された上で、税務上問題があると見込まれる者に対して税務調査が実施されるなど、税務コンプライアンスの向上に活用されています。(※)令和4年事務年度 租税条約に基づく情報交換実績の概要(令和6年1月 国税庁)

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