会社法の改正(第四次改正) について

日本から中国に投資して設立された現地法人は、歴史的には中華人民共和国会社法(以下、「会社法」とします。)のほか、いわゆる外資三法と呼ばれる外資企業に関する特別法の適用を受けて管理されてきましたが、外資三法の廃止により2020年1月1日からは全面的に会社法が適用されています。このような中、2023年12月29日、会社法の改正案(第四次改正)が全人代常務委員会で可決され、2024年7月1日から施行されることが決まりました。今回は、会社法の第四次改正の主要な改正内容と中国現地法人への影響について概説します。

1.会社法の第四次改正の主要な改正内容

以下では、会社法の第四次改正のうち、現地法人の管理に関係が深いと考えられる有限責任会社に関連する改正内容を抜粋して列挙します。

◇第四次改正の主要な改正内容(有限責任会社に関連のある内容を抜粋)

項目改正前改正後
「法定代表者」の肩書会社定款に基づき「董事長」「執行董事」もしくは「総経理」が法定代表者を担当会社定款に基づき「会社事務を担当する董事」もしくは「総経理」が法定代表を担当
「法定代表者」の行為の効果規定なし法定代表者が、会社名義で行った民事行為について、その法律効果は会社に帰属する 会社定款や株主会において法定代表者の行為に制限を加えた場合であっても、善意の第三者に対抗できない
資本金の「払込期限」の規定規定なし出資者に払込が義務付けられる資本金額については、会社定款に基づき会社成立の日から5年以内に払い込まなければならない
現物出資できる「資産」「有形物」「知的財産権」「土地使用権」等の貨幣価値がありかつ法により譲渡が認められる資産「有形物」「知的財産権」「土地使用権」「出資持分(株式)」「債権」等の貨幣価値がありかつ法により譲渡が認められる資産
「董事会」不設置会社における「執行董事」の廃止株主数が少数、もしくは規模が小さな有限公司の場合には、董事会を設置せず1名の「執行董事」を設置することができる規模が小さい、もしくは株主数が少数の有限公司の場合には、董事会を設置せず1名の「董事」を設置して、「董事会」の権限を付与することができる
「監事会」不設置会社の創設規定なし会社定款の規定により、董事を構成員とする「監査委員会」を設置し、「監事会」の権限を付与することにより「監事会」不設置会社とすることができる
「監事会」設置の例外規定株主数が少数、もしくは規模が小さな有限公司の場合には、「監事会」を設置せず1名もしくは2名の「監事」を設置することができる。規模が小さい、もしくは株主数が少数の有限公司の場合には、「監事会」を設置せず1名の「監事」を設置することができる また、全出資者の同意に基づき、「監事」を設置しないこともできる
「簡易減資制度」の創設規定なし未処分利益及び利益剰余金による補填後の会社の累積損失額について、簡易手続きによる減資手続が可能 (※ただし、事後の配当等に制限あり)
「簡易清算制度」の創設規定なし会社の存続期間中に債務が発生していない、もしくはすべての債務を返済している場合には、全出資者の同意の下簡易手続きによる清算手続が可能

2.会社法の第四次改正の中国現地法人への影響について

会社法の第四次改正では、これまで明確な規定はなかった法定代表者の行為の効果が規定されたほか、これまで通達により運用されていた「簡易清算制度」が会社法に規定されました。また、これまでも親子ローン(外債)を資本に組み入れることについては、外貨管理上も認められていましたが、会社法の規定上でも債権を現物出資できることが明確にされました。このほか、これまでは設置が義務付けられていた「監事会」または「監事」を不設置とすることが認められるなど、第四次改正では、会社管理に関わる規定の法律による明文化や、実態に即した会社管理を可能とする方向での修正が行われたものと言えます。

一方、資本金の払込期限については、既に廃止された外資三法の中では期限が設けられていましたが、会社法ではこれを規制する規定がありませんでした。そのため、一部では、実際に払込の意思はないにもかかわらず必要以上に大きな登録資本金を設定し、払込期限を会社清算前までと設定する、というようなケースも見受けられました。今回の改正により、払込期限が設立から5年以内に限定されたことにより、設立時に設定された登録資本金については5年以内に払込が実施されるようになることから、登録資本金と払込資本金との間に乖離が生じる前出のようなケースはなくなってゆくものと考えられます。なお、第四次改正が施行される2024年7月1日以前に定款で規定された5年以上の払込期限については、別途法令で取り扱いを規定するものとされており、前出のケースのように会社清算まで登録資本金が払い込まれない状況は是正措置を求められることになるものと考えられます。

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