個人所得税等の源泉徴収手続に関する手数料収入 について

 多くの中国現地法人では、1月~3月の間に2023年の税務上の三代手続費用に関する収入が計上されているかと思います。三代手続費用とは、企業などの単位や自然人(以下、「手続義務者」とします。)が法令によって徴税上の手続きの一部を担う義務が生じる場合において、国が手続義務者に対して法令に定められた手数料を支払うことを総称する用語となります。今回は、三代手続費用のうち、一般の企業に関係がある税金の源泉徴収手続に関する手数料収入について説明します。

1.三代手続費用とは

 企業などの単位や自然人が、税法等の法令上の規定により、源泉徴収納税(代扣代缴)、代理徴収納税(代收代缴)、委託代理徴収(委托代征)のいずれかの方法により、徴税上の手続きの一部を担う義務が生じる場合には、法令により国が手続義務者に対して一定の手数料を支払うこととされており、これを三代手続費用といいます。一般の企業にとっては、従業員への給料の支給や労務提供者(個人)への労務費の支払にあたって必要となる個人所得税の源泉徴収納税手続、非居住者企業に対する役務提供費用やロイヤルティ、利息、配当などの支払にあたって必要となる増値税及び企業所得税の源泉徴収手続などが対象となり、実際納税額の2%が国庫から手数料として支払われます。

 なお、三代手続費用の支払いを受けるためには、電子申告システムにおいて一定の申請が必要とされており、通常は1月~3月の間に前年1年間の三代手続費用に関する申請が行われます。

◇一般の企業にかかわる三代手続費

対象となる主な手続支払われる手数料
企業が従業員に支払う給料に関する個人所得税の源泉徴収手続納税された個人所得税額の2%
企業が労務提供者に支払う労務費に関する個人所得税の源泉徴収手続納税された個人所得税額の2%
企業が非居住者企業に対して支払う費用(役務提供費、ロイヤルティ、利息、配当等)に関する企業所得税、増値税の源泉徴収納税手続き納税された企業所得税額、増値税額の2%

2.三代手続費用に関する企業の財務処理

 企業が支払いを受けた三代手続費用は、手数料収入として企業の営業外収入に計上されます。また、上海市税務局の見解によれば、この手数料収入は増値税の課税取引となりますので、各企業の増値税の課税ステイタスに応じて、一般納税人であれば6%、小規模納税人であれば3%(2024年1月現在は軽減税率1%が適用)の増値税額が含まれるものとして税務処理が行われる必要があります。

 なお、企業が支払いを受けた三代手続費用について、これが税務申告を担当した担当者個人に帰属するという見解が散見されます。しかしながら、前述の通り、三代手続費用は、法令上源泉徴収納税等の手続き行うことが義務付けられる単位もしくは自然人に対して支給されることとされています。一般の企業に関係のある個人所得税や企業所得税等の源泉徴収納税手続きは、法令により、関連する支出を行う企業に対して義務付けられていますので、これに対応する三代手続費用についても、手数料収入は企業に対して帰属するものと解釈されることになります。

 なお、国庫から支払われた三代手続費用の収入について、多くの財務担当者において、『国庫からの税金還付』というような表現を用いて説明されていますが、法律上は企業の手数料収入となります。財務資料の確認においてはこの点に注意が必要と言えます。

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