中華人民共和国印紙税法の施行について

 中国の印紙税に関しては、中華人民共和国印紙税暫定条例(1988年施行、2011年改正)(以下、“暫定条例”とします。)において課税文書及び税率等について規定されてきましたが、2021年7月1日より中華人民共和国印紙税法(以下、“印紙税法”とします。)が施行され、これに伴い暫定条例は廃止されました。印紙税法の施行により課税文書、税率等に変化が生じる部分もあるため、今回は、印紙税に関して改めて内容を整理します。

1.印紙税の課税文書と税率

 印紙税は、印紙税法に規定される文書(以下、「課税文書」とします)を使用(作成)する者、及び証券取引を行う者に対して課税され、課税文書の種類に応じて、税率、及び税額の計算方法が異なります。以下では、課税文書のうち一般的とされる文書を抜粋して表示します。

■印紙税の課税文書と税率(抜粋)

文書の種類課税標準税率(税額)摘要
売買契約書購入・販売金額0.03%動産の売買契約(個人間の動産売買契約は含まない)
請負契約書請負金額0.03% 
運送契約書運送費用0.03%貨物運送契約及びマルチ連動運送契約(パイプライン運送契約は含まない)
技術契約書契約金額0.03%特許権、独占技術使用権の譲渡にかかる証憑は含まない
賃貸借契約書賃借料金0.1% 
倉庫・保管契約書倉庫・保管費用0.1% 
財産保険契約書保険料0.1%再保険契約は含まれない
金銭消費貸借契約書借入金額0.005%銀行、その他金融機関との金銭消費貸借契約
権利移転にかかわる文書 (土地使用権及び家屋、株式譲渡に係る文書)取引金額0.05%土地使用権払下げ、土地使用権及び家屋等の建築物・構築物の譲渡、株式譲渡(証券取引にかかる印紙税が課税された取引を除く)にかかわる売買、相続、贈与、交換、分割にかかわる文書
権利移転にかかわる文書 (商標独占使用権、著作権、特許権、独占技術使用権の譲渡に係る文書)取引金額0.03% 
営業帳簿払込資本金及び資本積立金0.025%既に払込資本金及び資本積立金に基づいて納税が行われた帳簿に関しては、以降の年度において払込資本金及び資本積立金の増加がある場合にのみ増加金額に対して課税
証券取引取引金額0.1% 

 印紙税法では、文書として作成された契約書では取引金額が明確とならない場合については、実際に取引された金額を基礎として課税されることとされています。そのため、取引先との継続的な取引契約の中で個別の取引については「契約書」が作成されていないような場合であっても、取引基本契約の存在を前提として“発注書”や“受注確認書”などのやり取りにより個別取引の内容を確認している場合には、これらの文書のやり取りに基づいて確定した実際の取引金額に基づいて課税されることとなります。

 なお、領収書は、日本とは異なり中国では課税文書には含まれていません。

2.印紙税の納税管理

 2017年1月1日から施行されている管理規定により、印紙税は、(1)印紙購入方式、(2)印紙税申告方式のいずれかの方法により納税を行わなければなりません。(2)の方式は、課税期間(1ヶ月、四半期、年度、等)に発生した課税文書の受領を一括して申告して納税する方式であり、課税文書の受領が頻繁に発生する場合には、(2)の方法を採用することが認められることとされています。また、印紙税法においても、(1)(2)ともに認められることとされています。

(1)印紙購入方式を採用する場合には、購入した印紙を課税文書に貼付しなければなりません。一方、(2)印紙税申告方式を採用する場合には、印紙の貼付義務はなく、申告書控え及び納税証明を保管すべきこととなります。

3.注意事項

 印紙税法の施行により、課税文書、印紙税率に変化が生じています。例えば、従前は課税文書とされ印紙税の納税が義務付けられていた政府機関が発行する権利証書(例えば、営業許可書や不動産登記証、土地使用権証など)については、印紙税法では課税文書から外れており、これについては印紙税の納付が不要とされます。また、営業帳簿については、払込資本金及び資本剰余金が増加しない限りにおいて印紙税は課税されないこととされています。

 また、2017年1月1日から施行されている管理規定では、会社に“印紙税課税文書登記簿”の設置が義務付けられました。印紙税課税文書登記簿は、会社において印紙税が納税された課税文書を整理するための納税帳簿であり、税務局からの確認に応じて提示が必要となります。なお、印紙税は、正確な納税が行われていない場合には、最高で課税額の20倍の罰金が課されることとされています。管理規定により設置が義務付けられた印紙税課税文書登記簿の運用と合わせて、適切に印紙税の納付が行われる社内の体制を整える必要があるものといえます。

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