新赴任者の中国への渡航に関する手続きと注意点について

 中国では2020年から新型コロナウィルスの感染拡大への対応として外国人の出入国管理に関しても関連規制を強化してきましたが、2022年12月から規制を徐々に緩和し、2023年は強化されていた規制を2020年以前とほぼ同様の水準に戻す一年となりました。今回は、現時点における新赴任者の中国への渡航に関する手続きと注意点について概説します。

1.新赴任者の中国への赴任に必要な手続き

 中国の現地法人もしくは駐在員事務所への新赴任者が日本から中国に赴任するための法律上の手続きは以下のような流れとなります。

◇中国への赴任に必要な手続き

 手続き
(1)首席代表、代表の登記 (駐在員事務所の場合のみ)
(2)「工作許可通知」の申請(※)
(3)Zビザ申請及びZビザによる入国(※)
(4)「工作許可証」の申請
(5)「居留許可(工作類)」の申請

(※)駐在員事務所の首席代表については(2)(3)の手続きを省略することが認められており、Mビザでの渡航(もしくはビザなし渡航)後に(4)(5)の手続きを行うことが可能です。

 新赴任者は就業目的で中国に入国し、就業(工作)のために中国に滞在することになりますので、上記のようにZビザ(就業目的)で入国し、居留許可(工作類)を申請して中国での滞在を開始することになります。

2.中国への入国と入国後の手続き

 中国への赴任にあたって、上記1.(1)~(3)のZビザ申請までの手続きについては赴任者が日本国内にいることが前提となる手続きですが、(3)Zビザによる入国の後は、赴任者は外国人として中国国内法令の適用を受けることとなります。まず、中国への到着後、入国にあたって入国審査が行われます。また、入国後は、入国から24時間もしくは48時間以内に臨時宿泊登記が必要となります。

 登記手続きは、宿泊場所を管轄する公安局の派出所にて行うこととされていますが、上海では、上海市出入国管理局のウェブサイトから登記手続きが可能となっており、派出所に出頭する必要はありません。また、宿泊場所がホテル等の宿泊施設の場合には、登記手続きは宿泊施設に対して義務づけられているため、個人が登記手続を行う必要はありません。なお、臨時宿泊登記は、宿泊場所が変わるごとに手続きが必要となります。この登記手続きを怠ると、法令上、手続違反の行政処罰を受けることになります。

3.中国での滞在に必要な手続き

 赴任者は、中国への入国から30日以内に長期滞在に向けた『居留許可』申請が必要となります。『居留許可』の申請にあたっては、滞在目的に沿った滞在資格の手配が必要となりますが、赴任者は就労目的での滞在となるため、『工作許可証』の取得が必要となります。このように、『居留許可』は『工作許可証』の取得を前提としますので、中国国内での転勤があった場合や、帰任などにより『工作許可証』の条件に変更がある場合には、『居留許可』の変更もしくは抹消の手続きが必要となります。

 『居留許可』を取得した場合には、有効期間内において中国国内に滞在することが認められるとともに、一時出国した場合にも改めて『ビザ(査証)』を申請する必要はありません。

4.新赴任者の中国への渡航時の注意点

 冒頭で述べたように、2023年は新型コロナウィルスの感染拡大にともない強化されていた規制が緩和される一年となりましたが、外国人の国内での活動に関する管理については2020年以前よりも強化されている印象を受けます。特に、新赴任者について、①赴任(渡航)以前の出張などによる中国入国時に目的外活動の事実がなかったか否か、②赴任(渡航)後、居留許可取得前に就業活動の事実がなかったか否か、③赴任先の中国法人の実在性、などといった点について、比較的厳しく確認が行われているように思われます。①については、赴任以前にMビザ等で渡航した際に就業活動が行われているものと認定される場合には、目的外入国の法令違反があったものとして処罰されることになります。また、②については、法令上、Zビザで入国して『工作許可証』が取得されていたとしても、『居留許可』を取得する前に就業活動をすることが認められていないため、この間に就業活動が行われているものと認定される場合には、該当する法令違反があったものとして処罰されることになります。

 このうち、特に②については、厳格に運用されるとすると、Zビザで入国した赴任者が、『居留許可』の取得前に中国国内においてどのような活動が認められるのか、というような疑問点も生じますが、法令が形式的にこのような規定となっているため、入国後、『居留許可』取得前の活動においては、当該法令を前提として十分に注意した行動が必要になるものと考えられます。

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