2019年1月1日より個人所得税法が改正され12月31日で一年が経過しました。改正された個人所得税法(以下、「改正個人所得税法」とします。)では、総合所得については年間で税額を確定することとされていますが、税額の具体的な確定方法については改正個人所得税法の中では必ずしも明確に規定されていませんでした。この点に関して、2019年12月31日付で国家税務総局から公告(以下、「本件公告」とします。)が公布されました。今回は、本件公告の内容について概説します。
1.「居住者」の「総合所得」に対する課税
改正個人所得税法では、①賃金給料所得、②労務報酬所得、③原稿報酬所得、及び④特許権使用料所得の四種類の所得を「総合所得」とし、「中国居住者」の「総合所得」については、暦年一年間で税額を確定して納税すべきこととされています。
本件公告は、この「中国居住者」の「総合所得」に関する個人所得税の確定方法やこれに付随する事項が規定されています。
2.本件公告の概要
本件公告の概要は以下のとおりです。
◇本件公告の概要
項目 | 規定の概要 |
個人所得税額の計算方法 | 【総合所得】 = (総合所得の収入) – (基礎控除60,000元) – (専項付加控除) 個人所得税額 = 【総合所得】 × 税率 – 速算控除額 (※1) |
「年間納税差額」の計算方法 | 年間納税差額 = 個人所得税額 – 年間既納税額 (※2) (プラスの場合には「納付」、マイナスの場合には「還付」 |
年度調整が不要とされる者 | 年間納税差額がプラスであるが、総合所得に関する収入が12万元以内の者年間納税差額がプラスであるが、要納付額が400元を超過しない者年間納税差額がない、もしくはマイナスであるが還付申請を行わない者 |
年度調整が必要とされる者 | 年間納税差額がマイナスであり、還付申請を行う者総合所得に関する収入が年間12万元以上であり、かつ年間納税差額がプラスで要納税額が400元を超過する者 |
年度調整の方法 | 納税義務者自身による本人申告給料や長期にわたり労務報酬を支給する源泉徴収義務者による代理申告納税義務者により委託された個人や法人、組織による代理申告 |
年度調整の期限 | 2020年3月1日~6月30日 中国国内に住所を有しない者で3月1日以前に中国を出国する者は、出国前に年度調整を行うことができる。 |
(※1)総合所得に対する超過累進税率表
課税所得 (単位:元) | 税率 | 速算控除額 |
0 ~ 36,000以下 | 3% | 0 |
36,000 ~ 144,000以下 | 10% | 2,520 |
144,000 ~ 300,000以下 | 20% | 16,920 |
300,000 ~ 420,000以下 | 25% | 31,920 |
420,000 ~ 660,000以下 | 30% | 52,920 |
660,000 ~ 960,000以下 | 35% | 85,920 |
960,000 ~ | 45% | 181,920 |
(※2)賃金給料所得、労務報酬所得、原稿報酬所得、特許権使用料所得については、それぞれの所得の支払者(企業、組織等)に個人所得税の源泉徴収義務が課せられています。「既納税額」とは、所得の支払者によって源泉注して納税された税額を指します。