小規模企業に対する優遇措置の期限の延長について

 本レポートにおいてもたびたび取り上げていますが、これまでの新型コロナウィルスの感染拡大に対する各種規制やその他の要因により経済活動が低迷しており、特に小規模零細企業に対して非常に大きな影響を及ぼしているものと考えられています。そのため、政府としても小規模零細企業の負担軽減を目的とした各種の優遇税制による措置がとられてきましたが、この度、これらの措置の一部の期限を延期することが発表されました。これらの優遇税制については、2023年に入って制度の内容に調整が行われているものもあります。そのため、今回は、2023年以降適用される小規模企業に対する優遇税制に関して、主な制度の概要と期限について改めて整理します。

1.小規模納税人に対する増値税の減免措置

 増値税の課税を受ける事業主(課税主体)は、一般納税人と小規模納税人に区分されますが、ここで説明する減免措置が適用されるのは小規模納税人のみとなります。 この免税措置では、2027年12月末までの期間において、増値税の小規模納税人に関しては、低減税率である1%が適用されることとなります。また、毎月の課税売上高が10万元以下の小規模納税人については、増値税の課税を免除することとされています。小規模納税人の増値税の申告は四半期ごとに行われることとされていますので、四半期ごとの課税売上高が30万元以下である場合には増値税の課税が免除されることになります。

2.一般納税人に対する増値税の仕入税額加重控除措置

 中国では、増値税の課税上、増値税額は、取引対価に税率を乗じて計算され、売上先から課税主体に対して支払われます。(これを「売上増値税」と言います。)課税主体は、申告により売上先から支払われた売上増値税額を納税する必要がありますが、課税主体が一般納税人の場合には、自社が仕入先に対して支払った増値税額(これを「仕入増値税」と言います。)を控除することが認められています。(これを仕入税額控除と言います。)

 仕入税額の加重控除措置では、毎月の仕入税額控除において、実際に発生した仕入増値税額に5%もしくは15%の比率を乗じて計算された金額(加重控除額)を加算することにより、増値税納額を減額することになります。これは、事実上、加重控除額に相当する金額の収益を得たのと同様の効果を得ることになります。

3.小規模薄利企業に対する企業所得税の減税措置

 企業所得税は、企業が一納税年度(暦年)において稼得した利益に対して課税されますが、企業所得税法及び同法実施条例(以下、「企業所得税法等」とします。)により、基本税率は25%とされています。一方、企業所得税法等は、要件を満たす小規模薄利企業に対しては軽減税率(20%)を適用することとしています。

◇企業所得税法等の規定する小規模薄利企業の要件

企業の業態資産総額従業員数課税所得(年度)
製造業3,000万元以下100人以下30万元以下
製造業以外1,000万元以下80人以下30万元以下

 一方、2027年12月31日までの期間においては、企業所得税法等の規定にかかわらず、資産総額5,000万元以下、従業員数300人以下、課税所得(年度)300万元以下のすべての条件を満たす企業に対しては、課税所得を1/4で圧縮したうえで軽減税率(20%)を適用するという減税措置が実施されます。なお、課税所得が300万元を超過する場合については、全課税所得について基本税率25%で課税されることとなります。

※2022年までは課税所得を上記のような二段階に分け、異なる圧縮率を適用していましたが、2023年以降は300万元以下の課税所得について一律で1/4の圧縮率が適用されることとされています。

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