中国では、新型コロナウィルスの感染拡大による企業、特に小規模零細企業の負担軽減を目的として、社会保険料免除や減額のほか、各種の優遇税制による措置がとられました。これらの措置は2020年をもって終了することとされていましたが、4月に入り一部の優遇税制については2021年まで延期されることや新たな優遇措置が発表されました。今回は、2021年に適用される小規模零細企業に対する優遇税制について概説します。
1.小規模納税人に対する増値税の減免措置
(1)小規模納税人に対する増値税の課税
増値税の課税主体は一般納税人と小規模納税人とに区分されます。増値税の課税上、増値税額は、取引対価に税率を乗じて計算され、売上先から課税主体に対して支払われます。(これを「売上増値税」と言います。)課税主体は、申告により売上先から支払われた売上増値税額を納税する必要がありますが、課税主体が一般納税人の場合には、自社が仕入先に対して支払った増値税額(これを「仕入増値税」と言います。)を控除することが認められています。(これを仕入税額控除と言います。)課税主体が小規模納税人である場合には、この仕入税額控が認められませんが、軽減された増値税率(3%)が適用されることとされています。
(2)小規模納税人に対する増値税減免措置の内容
2020年は新型コロナウィルスの感染拡大による小規模零細企業の負担軽減のため、増値税の課税主体のうち小規模納税人に適用される増値税率が3%から1%へと減少されていました。この措置は2020年12月末で終了されることとされていましたが、実際には2021年に入っても継続されています。これに加えて、4月に発表された公告により2021年4月から12月の期間において、毎月の課税売上高が15万元以下の小規模納税人については、増値税の課税を免除することとされました。小規模納税人の増値税の申告は四半期ごとに行われることとされていますので、四半期ごとの課税売上高が45万元以下である場合には増値税の課税が免除されることになります。
◇小規模納税人に対する増値税の優遇措置
増値税の課税主体 | 基本税率 | 優遇税率 |
一般納税人 | 6%、9%、13% | |
小規模納税人 | 3% | 1% (四半期の売上高が45万元以下の場合には免除) |
2.小規模薄利企業に対する企業所得税の減税措置
企業所得税は、企業が一納税年度(暦年)において稼得した利益に対して課税されますが、企業所得税法及び同法実施条例(以下、「企業所得税法等」とします。)により、基本税率は25%とされています。一方、企業所得税法等は、要件を満たす小規模薄利企業に対しては軽減税率(20%)を適用することとしています。
◇企業所得税法等の規定する小規模薄利企業の要件
企業の業態 | 資産総額 | 従業員数 | 課税所得(年度) |
製造業 | 3,000万元以下 | 100人以下 | 30万元以下 |
製造業以外 | 1,000万万元以下 | 80人以下 | 30万元以下 |
一方、2019年から2021年の期間限定で企業所得税法等の規定にかかわらず、課税所得(年度)300万元以下の企業に対しては、以下のように課税所得を2段階に分けて1/4もしくは1/2で圧縮したうえで軽減税率(20%)を適用するという減税措置(以下、「2019年公示減税措置」とします。)が実施されています。なお、課税所得が300万元を超過する場合については、全課税所得について基本税率25%で課税されることとなります。
これに対して、4月に発表された公告では、2021年、2022年の2年間について、2019年公示減税措置を前提としつつ、課税所得のうち100万元以下の部分について、圧縮率を1/4から1/8とすることとされました。これを整理すると、以下の通りとなります。
◇2021年~2022年に適用される減税措置
課税所得 | 課税所得の圧縮率 | 税率 | 実効税率 |
100万元以下 | 1/8 | 20% | 2.5% |
100万元超~300万元以下 | 1/2 | 20% | 10% |