中国のみならず世界各地で猛威を振るう新型コロナウィルス(COVID-19)に対して、中国国内では徹底した移動制限及び隔離政策が実施されてきましたが、3月に入り国内での移動制限については緩和されつつあります。一方、現在では、新型コロナウィルスが国外から中国国内に持ち込まれることに対する監視が強化されつつあります。もともと中国では、外国人は出入国管理法の下、中国への入国から出国まで、法令に規定される所定の手続きを行わなければならないこととされていますが、監視強化の中で法令違反に対しても管理が強化されている模様です。今回は、注意すべき出入国管理の内容について簡単に整理します。
1.入国目的に応じたビザ申請
外国人が中国に入国する場合、事前に入国目的に応じたビザの申請が必要となります。ただし、(1)日本国パスポートの保有者が中国に入国する場合、(2)その滞在期間が15日以内である場合には、(3)入国目的が学習、工作、取材でないことを条件として、ビザの申請が免除されることとされています。
◇ビザの種類(抜粋)
種類 | 入国目的 | 免除の適用 | 3/28以降における“ビザなし” での入国の可否 |
Lビザ | 旅行 | ○ | 不可 |
Mビザ | 商業貿易活動 | ○ | 不可 |
Fビザ | 人事交流、訪問、考察等の活動(滞在) | ○ | 不可 |
Zビザ | 中国国内での工作(就業) | × | |
Xビザ | 学習(長期留学はX1、短期留学はX2) | × | |
Jビザ | 報道 | × |
ビザなし渡航もしくはMビザにおいて関連会社や取引先の技術指導や支援を行うケースがしばしば見受けられますが、このような場合の法令上許容される活動範囲は、商業貿易活動や人事交流、視察、等に限定されていることを十分に理解した上での行動が必要といえます。
なお、中国政府は、2020年3月28日から、3月28日以前に取得されたすべてのビザ、居留許可に基づく入国を禁止することとし、この期限も明確に決められていません。(緊急に入国が必要な場合には、改めてビザの申請が必要であることとされていますが、申請可能な条件は極めて限定的な場合にとどめられています。)また、“ビザなし”での入国に関しても認められていませんので、十分に注意が必要です。
2.入国後の宿泊場所に関する臨時宿泊登記
外国人は中国に入国したのち、臨時宿泊登記を行う必要があります。
◇臨時宿泊登記の条件
入国後の宿泊場所 | 臨時宿泊登記の手続義務 | 手続の場所 | 期限 |
1.ホテル、その他の宿泊施設 | 宿泊施設 | 宿泊施設フロント | 宿泊手続時 |
2.マンション、住居、等 | 外国人本人 | 住所を管轄する派出所 | 24時間以内 |
入国後にホテル、その他の宿泊施設に宿泊する場合には、宿泊施設側が宿泊登記の手続きを行わなければならないことになっています。一方、マンション、その他の住居に宿泊(滞在)する場合には、外国人本人もしくは住居を提供する者が、入国から24時間以内に住所を管轄する派出所に赴き、宿泊宿登記の手続きを行う必要があります。なお、入国直後にホテルに宿泊し、その後マンション等の住居に移転した場合においても、マンション等の住居に移動したのちに宿泊登記の手続きを行う必要があります。
従来、“居留許可”保有者が入国する場合には臨時宿泊登記は不要となるという見解もありましたが、法令や通達によりに明確に規定されているわけではありません。また、筆者が上海市公安局の複数の派出所窓口でヒアリングしたところ、“居留許可”保有者であっても入国のたびに臨時宿泊登記は必要との回答を得ています。このような状況下では、“居留許可”保有者であっても“入国のたびに”宿泊登記を行うべきものといえます。
なお、上海では、インターネット上(上海市出入国管理局ウェブサイト参照)で臨時宿泊登記の手続きを行うことができるようになりました。新型コロナウィルスの感染拡大防止のため、派出所においてもインターネット上での手続きを推奨していますし、手続きは必要情報とパスポート等の写真の送信のみとなっており、いたって簡単な手続きとなっています。また、本校執筆時点において、インターネット上での臨時宿泊登記に関しては、入国から24時間という期限を超過していたとしても受理されることが確認できています。
3.注意事項
新型コロナウィルスの感染拡大が世界的に広がりをみせる中で、外国人が居住するマンションや小区では外国人の出入りの状況に敏感になっているところがあります。このような状況下で公安当局としても外国人の正確な宿泊地情報を把握のために臨時宿泊登記の実施状況の確認に力を入れているようですので、入国後には必ず法令に基づいた臨時宿泊登記を行う必要があります。また、この機会に、外国人が適法に入国、滞在していることについても確認が行われているという情報もありますので、許可された入国目的(ビザの種類)と滞在時の活動内容については十分に注意が必要といえます。